shoppingB


ショッピングを始めて二時間余り。あれもこれもと(幸村の服や靴を)買ったために荷物がいっぱいになってしまった。昼食を摂る前に一度車に置きに行き、二人はフードコートへと向かった。

三成が席を確保し、幸村が食べ物や飲み物を買いに行っているときのこと。見るからにチャラそうな男の二人組が、足を組んで座っている三成に声を掛けて来た。

「キミ一人?って、なわけ無いか〜。こんなとこに一人じゃ来ないもんね。友達と一緒?」
「だったらさぁ、俺達と一緒にお昼どう?奢っちゃうからさぁ、お友達連れ戻して来てよ〜。」

初対面なのに随分と馴れ馴れしい。そして、三成を女友達と二人連れだと何故か勘違いしていた。聞いてもいないのに自己紹介を始めた男達を見詰めながら、三成は何と言って追い払うか考えていた。いつもならばこんな下らない男など一言邪魔だと言い放ち、しつこいようなら引きずり倒して踏み付けている。だが今は幸村と一緒なのだ。騒ぎを起こして可愛い可愛い甥に迷惑を掛けてしまうのは本意では無い。
そこへ、トレイの上にミラノサンドセットを二人分載せた幸村が現れた。

「三成殿!」

変な男達に絡まれている!
幸村はチャラ男二人を睨み付けると、三成を守るように立ちはだかった。

「ん?弟さん?」

一人の男は上背があったために幸村を見下ろす形になった。もう一方のパーマをかけた茶髪の男は、ニヤニヤしながら「お姉ちゃん貸してよ」、なんて言っている。言われた瞬間、幸村は一気に頭に血が登るのが分かった。彼が男達に手を出そうとしたそのとき、

「弟では無い。この者は私の恋人だ。」

三成がそう言いながら後ろから抱き付いて来た。そうしてしっしと手を振ってやれば、男達は意外にもすぐに退散して行った。三成がいる背後からでは窺うことは叶わなかったが、激怒していた幸村の目は物凄い迫力だった。チャラ男どもはそれに気圧されて、尻尾を巻いて逃げて行ったのである。
男達が見えなくなると、三成は幸村から離れた。怒りで我を忘れていた幸村であったが、想い人に密着されていたことに気が付くと、背中に残る柔らかな感触に固まってしまいしばらく動けなかったのであった。



ランチを済ませ、二人はしばらくまた買い物に興じた。スプリングコートが欲しいと言う三成に、今度は幸村が似合うものを見立ててあげたり、休憩にアイスを食べたり。マイクロミニのスカートを試着した三成を見て幸村が乱心遊ばされたりとハプニングもあったが、楽しい時間はあっと言う間だった。

駐車場までの短い帰り道を、夕陽を背に受けながら三成と幸村は人混みに紛れて手を繋いで歩いた。

「級友達に見られたら、シスコンだと思われるかも知れないぞ。」
「構いませぬ。」
「…そうか。私も、貴様とならばどう見られても構わない。仲の良い姉弟でも、恋人同士でも。」



弟と言ったり、恋人と言ったり。嘘が大嫌いなあなたが、どうしてそんなことを?
こんなに近くにいるのに、あなたの気持ちが全然分からない。



自分の右手を握る三成の白くて美しい左手が、そのまま心臓を鷲掴みにしているかのように……幸村は胸が苦しくて仕方が無かった。




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