shoppingA


車を走らせること一時間と少々。到着したのは、郊外にある大規模なアウトレットパークだった。閉園になった遊園地の跡地を利用して建設されたそこは、オープンしてから10年近く経つのだが休日ともなるとなかなかの賑わいを見せていた。

「広いでござるなぁ…。」

ここを訪れるのは二人とも初めてで、幸村はマップを開いて敷地の広さに驚いていた。

「端から見て行くのではなく、何が欲しいかやどの店に行きたいかと先に決めて、それから行動するべきだな。」

三成は幸村からマップを受け取ると、あいうえお順に並んだ店舗名をチェックし始めた。そんな彼女の横顔を、幸村は頼もしい気持ちで見ていたのだった。

「まずは幸村のジャケットを買うぞ。あとパーカーだな。よく着ているだろう。それから貴様のシャツも、靴も、ワンピースも買いたい。」
「ちょ、ちょっと!三成殿!!漫画の方で無いなら明らかに某には必要の無い物が混ざっておりますぞ!?」



「こちらも良いし、こちらも似合うな…。」

クラシックな雰囲気の紺色のニットカーディガンと、シワ加工のしてあるデニムシャツを幸村の体に当てて唸っている三成。幸村はと言えば、試着に試着を繰り返し早くも体力ゲージが赤かった。

「む、色違いがあるだと?店員、ついでにこちらの試着も頼む。」

(三成殿に弄ばれるなら…本望でござる……。)

完璧に三成の着せ替え人形と化していた幸村だったが、幸せそうなので放っておくとしよう。

「あれ?真田君?」
「あ、ほんとだ。真田くーん!」

淡いグレーのカーディガンを着てフィッティングルームから顔を出していた幸村に、手を振り駆け寄って来た者達がいた。それは、同じクラスの女子のグループであった。

「偶然だねー。」
「ああ、奇遇でございますなぁ。」

顔が良くて人当たりも良い幸村は、言うまでも無く人気者であった。そんな憧れの彼に出会えた女の子達は、嬉々として幸村を取り囲む。それからすぐに、三成の存在に気付いた。

「この人、ひょっとして真田君の彼女?」
「あ、いや、その…っ!」

うろたえる幸村と、不躾な視線を向けてくる数人の娘達に対して、三成は眉一つ動かさない。

「私は幸村の姉だ。いつも弟が世話になっている。」

三成はそう言うと、幸村の頭を軽く押さえてクラスメイト達にお辞儀をさせた。彼女らは三成が幸村の身内と分かると、値踏みをするかような眼差しを即座に引っ込めてにこりと笑った。

「なんだ、お姉さんだったんですね。こちらこそお世話になってます。」
「お姉さんすっごい美女〜!」
「そう言えば、前に学校にも来たことありましたよねぇ?」

幸村は目の前の女の子達のそんな態度が気に入らなくて、試着室のカーテンの向こうに隠れてしまった。三成も三成で、きゃいきゃい騒ぐ甥の同級生を適当にあしらいながら、幸村に似合う洋服の吟味を続けていた。

(このジャケット、裾の形が面白いな…。これならば絶対にベージュが良い。先ほど買ったパーカーと合わせれば、森ボーイの完成だな。い、いかん!森ボーイな幸村だなんて想像しただけで可愛くて堪らんではないか!…まぁ、奴ならば全裸に鉢巻一枚であってもあの愛らしさは霞まないが。靴下一枚でいたって絵になるだろう。)

そして仏頂面で、ぺろりんちょと舌なめずりをしてとんでもないことを考えていたのだった。しかし森ボーイとは何ぞや。





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