shopping


「幸村、出発は九時だぞ。」

ーガチャッ。

三成はそう言うと、ノックもせずに幸村の部屋のドアを開けた。

「わわっ!三成殿!?」

叔母の登場は割といつも突然であるのだが、今朝はタイミングが悪かった。幸村は着替えの真っ最中であったのだ。カーキ色のカーゴパンツを下に着用していたから良かったものの、上半身は裸だった。女子ではないのだからそこまで恥ずかしがる必要も無いかと思うが、そこは思春期の男子。恋焦がれる相手見られるのはどうにも恥ずかしくて、幸村は手にしていたボーダーのシャツで慌てて前を隠した。

「ノックくらいして下され!」
「別に構わないだろう、家族なのだから。」

だが三成は、多感な時期の少年の心など全く理解してくれていない。そればかりか、

「…って三成殿!何て格好をしていらっしゃるか!!」

無防備な格好をしてむやみやたらに刺激する始末だ。ちなみに現在の彼女の出で立ちは、着替えの途中なのだろうか、レースがセクシーな黒いブラウスに同色のガーターベルトとストッキングという恐ろしいものであった。幸村は、前を隠していたシャツで今度は顔を覆った。

「だから、家族なのだから構わないだろう。」

三成は大体、この一言で片付けてしまう。これが、いかにも中年、という体型をしたちんちくりんパーマのオカンであれば文句も無いのだが…。いや、オカンのガーターベルトは大問題か。

「とにかく、あと一時間もしたら出掛けるからな。間に合うように支度をしておけ。」

三成はそれだけ申し伝えると、何事も無かったかのようにドアを閉めて去って行った。幸村には見ていなかったが、彼女の後ろ姿はパンツが丸見えだった。ピンクに黒のドットというラブリーなそれ。

三成が出て行ったばかりの扉を見詰めて、幸村は深い溜め息を吐いた。

「『家族』、か…。」

(もっと意識しては頂けないだろうか。)

今日は楽しみにしていた二人きりでのショッピング。なのに、幸村の気持ちは少し沈んでしまった。



身支度の整った三成は、幸村にはとても眩しかった。付けまつ毛などいらない彼女は、マスカラとアイラインだけで魅惑の猫目になり、ほんのり色を乗せた唇はぷるぷるで。ちょっと派手めのレオパード柄のロングカーディガンも良く似合っていた。幸村は横に並ぶのが恥ずかしくて、移動が電車では無く自家用車で良かったと思った。まぁ、運転は三成任せなのだが。

ちなみに。

(ファー付きのブルゾン可愛い!襟に口元が埋まってるのと、袖が余っているのが殺人的な可愛らしさだ!!少し大きめの物を買い与えて正解だったな…。)

と三成が内心萌えていたのは、神のみぞ知るところであった。




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