この者と添い遂げる許可を!B


 だが、初芽の生易しい攻撃だけでは足らないのか新婦からは紫色の禍々しいオーラが発されていた。
「初芽……白を、私の刀を持て……。」
「承知しました!」
「ひ、ひぃい三成殿、抑えて下され〜っ!!」
 まさかの白無垢の凶王降臨に、幸村も慌てる。しかし式をぶち壊した(?)のは間違いなく家康だ。眉を顰めていると佐助が二槍を投げて寄越して来たので、思わず構えてしまった。
「誰が貴様なんぞに妹をくれてやるか!!斬首だ、イエヤッスゥウウ!!!」
 とうとう暴れ出した三成。その混乱に乗じて政宗まで刀を抜いた。
「楽しい二次会の始まりかい?真田幸村、祝儀と一緒に敗北をくれてやるぜ!!Let's party!!」
 六爪を構え、幸村に突進して来る政宗。
「何をぅ!貴殿に打ち勝ち、今日の門出に花を添えて見せまする!!」
 幸村はすかさず応戦した。刃と刃のぶつかる、激しい金属音が辺りに響く。
「イイ返事だ真田幸村!で、アンタ本当に石田を愛してるのか?」
「愛しております!」
「声が小せぇなぁ、本当に本当に愛してるのか?」
「愛しております、心からぁあ゛あ゛あっ!!!」
「Excellent!幸せにしてやんな!」
「政宗殿に言われずともっ!!」
「貴様ら!何の問答をしているっ!!!」
 家康を斬滅し終えたらしい三成が、真っ赤な顔をしながら二人に斬りかかって来た。
「いいねいいねぇ!恋に喧嘩に、楽しいねぇ!」
「野郎ども!宴会だぜぇ!!」
 慶次や元親も一緒になって暴れ出し、鶴姫は「止めなくちゃ!」と矢を乱れ打ちにし出した。あちこちで乱闘が始まり、最早収拾の付かない状態である。泥だらけになった三成の着物を見て、密かに吉継が嘆いていた。



 しばらく乱戦が続き、もうもうと砂埃が湧き上がる中立っているのは幸村と三成だけだった。ぜぇぜぇはぁはぁ肩で息をする二人。互いに武器を構えて間合いを計りながら睨み合い、対峙している。何故夫婦となった二人がこんなことをしているのかは知らないが、三成達は真剣勝負の様相を呈していた。
「泥土の岸に横たわれっ!!」
 先に動いたのは三成。攻撃自体は躱したものの、続いて足元を狙われ幸村はよろけてしまった。
「くぅ…っ!!」
 そこを見逃すような三成ではなく、彼はあえなく地面に引き倒された。三成は、荒々しく幸村に馬乗りになる。着物の袷からにょっきりと出た白い足が艶めかしかったが、それに目を奪われるほど余裕のある人間など今はどこにもいなかった。幸村の胸倉を掴み、そのまま無理やり上体を起こさせる三成。そして彼女は叫んだ。

 「この者は、私に負けるような惰弱な男ですが!生涯私が守るので許して下さい!秀吉様、どうか…どうかこの者と添い遂げる許可をっ!!」

 そう言い終えると、三成は幸村に口付けた。勢いが良過ぎて、口と口の衝突事故みたいなキスだった。その光景を見て、いつの間に復活したのか招待客達が歓呼の声を上げた。なかなか離れない三成と幸村の口付けが卑猥なそれになり始めた頃、佐助が二人を引き剥した。



 「あんな熱烈なの見せ付けられちゃ、ねぇ。秀吉?」
「…うむ………。」
「まぁ、僕らの大事な三成君を泣かせたりしたら……取り殺してあげればいいだけの話だし。覚悟しておいてね、武田の若虎君。」
 天から降り注ぐおぞましい二つの視線に、幸村の背筋が冷たくなったのは言うまでもない。





 その後。
 皆の前で力関係を見せ付けてしまった幸村・三成夫妻。『天下平定後の日の本の視察』と言う名目の、ハネムーン代わりの全国行脚の旅にて立ち寄った先では、彼らは様々な者に揶揄されていた(主に夫が)。

 奥州にて。
「Hey,石田幸村!かかって来な!!」
「某は婿養子ではござらぬ!!」
 川中島にて。
「虎の兄ちゃん、アンタの女王様は寒いのが苦手なのかい?」
「そなたのじょおうは、おくないからでてまいりませんね。」
「女王ではなく、妻でござるー!!」
 手取川にて。
「真田の本分とは!!一に三成殿!二に三成殿!三に三成殿でござる!」(ビシッ!)
「いいぞ、ばっちりだ!某達のような、幸せいっぱいの夫婦を目指すんだぞ!」
「まぁ犬千代様ったら。」
(……私にも…アレをやれと……?)
 そして三方ヶ原にて。
「『人妻』って響きも悪くないなぁ!略奪愛も燃える!!まったく三成は罪な女だ!!」
「家康うぅうう!!!」
「斬滅でござる!!!」

 戦国最強っぽいカップルは、戦国最強っぽい夫婦となり、相も変わらず大暴れしながら新婚を満喫しているのだった。



 「大将とお嬢のやや、楽しみだなぁ!」
「ヒヒッ、さぞかし愛らしく、武に長けた子であろうなぁ。」
 …保護者二人に子どもを期待されながら。



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