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「こんなところで、何なんだけど…。」

クレープを食べてから、二人はゲーセンに行ったりドラッグストアに立ち寄ったりと放課後デートを満喫した。そろそろ帰るかと自転車を取りに戻ったそのときのこと、清正はおもむろにバッグの中を漁って小さな箱を取り出して三成に渡した。正方形のそれは、アイボリーのラッピングペーパー包まれ赤いリボンが掛けられていた。

「先月の、お返し。」
「…開けていいか?」
「もちろん。もうお前のだ。」

三成は丁寧に丁寧にリボンや包装紙を解いて、出てきた白い箱をゆっくりと開けた。

「ネックレス…。」

入っていたのは四葉のクローバーのモチーフが付いた、華奢なデザインのネックレスだった。

「安物で悪ぃんだけど、四葉のクローバーって幸福のシンボルだろ?可愛かったし、何かお前に似合いそうだったから…。」
「ありがとう清正。……早速、幸せになった。」

そう言って三成がふわりと微笑むと、清正は夕陽の元でも分かるくらいに顔を赤くした。それをごまかすように三成の手からネックレスを奪うと、彼女の後ろに回り金具を留めて装着させた。

そして、そのまま背後から三成を抱き締めた。

「…顔見られんの恥ずかしいから、このまんまで聞いてくれ。
今日、いつも通りに過ごしたのは実はわざとなんだ。3月14日って、3.14の数字の並びにちなんで、円周率の日でもあるらしくて。円周率は延々続いて終わりが無いってことで、ちょっと考えたんだけどな。
今日が何の日かなんて考えなくても、お前と過ごせれば俺はいいんだ。特別な日なんていらないから、来年も再来年も、そのずっと先も、円周率みたいに終わらないでお前といられたらいいなって思った。…だから、今日は特別なことは何もしなかった。」

清正は言い終わると、くそ!恥ずかしいっ!!と誰に言うでも無く怒鳴った。

「……俺もずっと、お前といたい。」

生まれてからずっと一緒にいたけど。これから先もずっと一緒にいたい。

三成の返事は、蚊の鳴くような小さな小さな声であったが、清正に届くには充分だった。

「好きだ、三成。」

スーパーの駐輪場の隅で繰り広げられる青春ドラマ。観客は買い物帰りの数名のおばちゃんであった。



もらったネックレスは、その日から三成の宝物になった。
だが、四葉のクローバーの花言葉が『私のものになって、私を想って下さい』だとは、三成も清正も知らないのであった。




I wish you every happiness!





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