プリクラ(清→三?・学パロ)


 「昨日、生まれて初めてプリクラを撮った。」
 そう言いながら三成は、幼馴染みの清正と正則にカットされたプリクラ見せた。
「隣りのクラスの立花・嫁じゃん!二人でゲーセンなんて行くのな!」
 『立花・嫁』というのは立花ギン千代のことだ(ついでに、『立花・旦那』はギン千代の彼氏の立花宗茂のことである)。彼女と三成が無表情で写っているのを見て、珍しいなと正則が言う。
「ゲームセンターではなく、ショッピングセンターの一角で撮った。」
「へー。」
 清正は無言で、女子高生が撮ったにしてはこざっぱりしているプリクラを凝視していた。
「女子の撮ったプリクラなど無縁であろう、貴様らにくれてやろうと思ってな。」
 三成がふふんと得意げに言う。ギン千代も三成も(性格はさせておいて)かなりの美人なので、正則は喜んでもらっていた。彼はモテないモテないとからかわれ、それを気にしているので「これ俺の彼女!」とハッタリをかますのに使うのかも知れない。
「清正はいらねーのかぁ?」
 数枚のプリクラを大切そうに財布にしまった正則が、清正に聞いた。
「い、いらねーよこんなもん!」
 じっと見詰めていたくせに、清正は手に持っていたプリクラを三成に突き返した。
「…ふん。後で欲しがってもやらんぞ。」
 三成は返されたそれを小さなケースに入れ、教室の窓際で話していた幸村、兼続の元へと行ってしまった。残ったプリクラを彼らに渡したのだろう、幸村も兼続も三成に礼を言っていた。
「お前のプリクラなんて誰が欲しがるかよ。」
 彼女には聞こえていないと分かっていながら、清正は三成の背中に向かって悪態を吐いた。



 その日の放課後、清正は一つ上の階のクラスに在籍する立花・旦那に会いに行った。
「お前の彼女と三成が昨日プリクラ撮って来たらしいな。」
「ああ、これのことだな。ギン千代の奴、恥ずかしがって俺とは撮ってくれないから友達とでも撮って来いって俺が頼んだんだ。」
 ギン千代は宗茂に自分の分以外全部を渡したらしく、彼はシートの状態に近いプリクラを持っていた。ギン千代と三成がプリクラだなんておかしいと思ったが、宗茂が請うた訳か。清正は妙に納得した。
「そんなのが欲しかったのか?」
 清正は眉間にシワを寄せ、宗茂が持っている物を指差した。
「何故だ?好きな人の写真を持っていたいと思うのはいけないか?まぁ、これは厳密には写真じゃないけどな。」
 そう言うと宗茂はペンケースの中からハサミを取り出し、ギン千代と三成が僅かにほほ笑んでいるプリクラを切り取って生徒手帳の一番最後のページに貼った。そして、どうだ可愛いだろう?とそれを見せ付けて来た。
「よくもまぁ恥ずかしげもなく。」
 清正はわざとトゲのある言い方をしてみせたが、その目は写真に写った三成を見ている。その様子を見た宗茂がにやりと笑って、もう一枚プリクラを切った。
「そうだな…。これは重複しているから特別にお前にやろう。」
「別にいらねぇ!!」
「好きな人の写真が欲しいと思うのは、普通のことだとさっき言ったばかりだろう?」
 真っ赤な顔をして受け取りを拒否する清正のバッグを漁り、宗茂は生徒手帳を取り出すと自分と同じように美少女二人が写るシールを貼ってしまった。
「じゃあ、ギン千代が待っているから俺はもう帰るな。」
 「勝手に何しやがる!」とか「あんな性格ブス好きじゃねぇ!」とか「誰が胸のえぐれた女なんか!」とか顔から湯気を出して喚いている清正を置いて、宗茂は颯爽と教室を出て行った。

 残された清正は、周りに人がいないのを確認してから、生徒手帳を開いた。そこには、はにかんで笑う三成と小さく口許をほころばせたギン千代がいた。ご丁寧に「MITSUNARI&GINCHIYO」と文字も書いてあった。この几帳面な字は、多分三成のものだ。
(可愛いな…。)
 プリクラは撮影技術の賜物か1.5倍から2倍くらい可愛く写ってしまうものだが、この三成なら50%カットしたって可愛い。
(髪はつやつやでキレイだし、肌は白くてキメが細かいし、唇は赤くてぷるぷるしてるし、目はデカいし睫毛は長いし。)
 プリクラを眺めながら、清正は顔が緩むのが分かった。「性格ブス」だなんて言って口喧嘩ばかりしていても、三成は可愛げのある女だと清正は思っていた。そんな彼女に恋をしていると、本当は自覚もある。でも、絶対に本人にだけは悟られたくなかったし告白する気もなかった。
「だって、悔しいだろ?俺ばっかり好きみたいで。」
 写真の中の三成に清正は言った。そうして彼は、そっと手帳を閉じると夕日の差し込む誰もいなくなった教室を後にした。



 その翌日から、清正は生徒手帳を見ていることが増えた。本人はこっそり、のつもりだったが、生徒の大多数がそう見る機会のない手帳だ、茶色いカバーがされたそれを開いているとなかなか目に付く。そのときの清正の眼差しはとても優しいので、「子猫か子犬か、ペットの写真でも入れてるのかな?」「いやぁ彼女でしょ!」といった様々な憶測が飛び交った。

 果たして、清正がそれを「彼女の写真だ」と胸を張って言える日が、いつか来るのだろうか……。




    終わり☆



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