かなり器用なんですA


 先ほど買い物カゴに入れた大量の桜色の毛糸と、色から形状からたくさんの種類があるボタンを交互に見ながら、真剣な顔をしている清正。
(こうしていれば格好いいのに…。)
 自分と違って男らしい、端正な清正の横顔を見上げて、三成は常々思っている疑問を口にした。
「お前は、何で手芸なんだ?」
「…は?」
「お前ほどの見た目ならば、運動部にでも入ればもっとモテただろうに。運動ができない訳でもないし。密かに女子達が残念がっているのだぞ?見た目は満点なのに趣味が軟弱でイマイチだと。…い、いや、貴様の女子からの評価などどうだっていいのだが……。」
 自分でも何を言っているのだろう、と三成は手持ち無沙汰に手元に並んでいた星形のスタッズをいじり始めた。
「何だそんなことかよ。別に俺は、ただ体を動かすよりは指先を動かすのが好きなだけだ。それに、この趣味だって案外役に立つと思わないか?お前にマフラーも、カーディガンだって作ってやれるんだから。それとも、男のくせに変だと、お前も思うか?」
「…いや、そんなことはないぞ。」
 何をしてても清正は清正だし、と付け加えて、三成はスタッズを棚に戻した。その返答に、清正は歯を見せて笑った。
「第一、俺はお前にだけモテてればいーんだし?」
「な、何を言うかっ!
もう付き合い切れん、俺は他の売り場を見て来る!貴様は気の済むまでボタンでも何でも見ていろ!!」
 頭を撫でようとする清正の手を払いのけ、三成は真っ赤な顔をしながら小走りでボタンやスタッズなどの売り場の前から立ち去った。
(可愛いな…。)
 その後ろ姿を見ながら、清正は顔がにやけるのを我慢できなかった。



 何となく三成が足を止めたのはビーズ細工のコーナー。スワロフスキーの高価なものから、プラスチック製の安価なもののバラ売り、ワイヤーにテグスやストラップヘッドなど、そこは色とりどりで目がチカチカしてしまうほどの品揃えだった。
(あ……。)
 中でも彼が目を付けたのは簡単そうなキーホルダーのキット。中に必要なパーツが全て入っているし、懇切丁寧な説明書も付いているので初心者でも確実に仕上げることができるだろう。
(これなら俺にも…。)
 三成は同じキットを二つ手に取り、清正に見付からぬようひっそりと会計を済ませた。

 「おーい三成!」
 清正も会計を終わらせたのだろう、手に紙袋を下げている(あの、自分の体から伸びる毛糸で編み物をしてるっぽい羊が印刷された袋だ)。
「気に入ったボタンは買えたのか?」
「ああ。見ろよ、ピンクのくるみボタン。可愛いだろ?」
「………女子か。」
 それを使用したカーディガンを着用するのが自分かと思うと、少々嫌気が差して来た三成だった。
(完成が楽しみだなんて、絶対に伝えてやらん。)




 後日、二人の鞄には赤いビーズでできたお揃いの苺のキーホルダーがぶら下がっていた。愛らしいけれどちょっと不格好なそれを、清正は何より大切にしていたとか。




    おしまい!



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