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惚レタラ負ケヨA
あいつと喋らなくなってどれくらい経っただろうか。同じ敷地内にいて、毎日顔だって見てるのに、口を利くことと視線が交わることだけが無い。
このまま終わるのだろうか、俺達の関係は。そう言えば、例の喧嘩をした日の前日は、二人で柔らかい褥の中で子猫か子犬みたいに戯れ合った。もう、何日前だったか覚えてもいない。くすぐったそうに笑ってたあいつの顔はすぐに思い出せるのにな。
三成の声が聞きたい。
あいつに謝ろうと決めた。こんな下らない矜持なんか大切にするより、三成が俺を呼ばないことの方が、三成の瞳に俺が映らない方が、よっぽど辛い。
ただ、あいつがもう俺と等しい気持ちで想ってくれていなかったら、俺はどうしようか。
「三成。」
私室で政務に励む三成を、俺は早速訪ねた。声が聞けるのなら、なじってくれてもいいとさえ思って。
「………。」
しかし三成は筆を止めず、こちらを見ようともしなかった。この反応は、まぁ想定内。
「三成、話があるんだ。」 めげずに俺は三成に近付いて行く。そんな俺に奴が突き付けたのは、「俺は貴様に話すことなど無い」とたった今書かれただろう紙切れ。……そんなに俺と喋んのが嫌かよ。そーかよ。
我慢ならずに、俺は三成を後ろから拘束するように抱き締めた。その衝撃で硯がひっくり返り墨が盛大に零れたが、知ったことではなかった。
「清正!?」
「……やっと喋った。」
俺は三成を力一杯ぐいぐい抱き締める。
「…痛いっ、離せ!」
「嫌だ。離せば逃げるだろ、お前。」
耳元で言ってやれば、抵抗が少し弱まる。
「こんな風にしなきゃまともに話せないなんてな……。
こないだのこと謝りに来たんだ。…悪かった。」
三成は完全に抵抗をやめた。
「……何故……。」
「ん?」
「何故貴様はいつもそうなんだ!貴様ばかりが悪いのではない、俺だって散々罵倒した!なのに何故こうしてお前は……っ!」
俺の腕に捕らえられたまま、三成が怒鳴るように言う。
「三成……。」
「お前が甘やかすから……。今回だってそちらから折れてくれると期待していた。どんどん俺は狡くなる。そしてどんどん我が儘になる。お前になら、何をしても何を言っても大丈夫、と……。」
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