意外と器用なんです(清三・高校生)


 放課後の昇降口、生徒会の仕事を終えた三成は、清正の部活が終わるのを待っていた。三成は手持ち無沙汰に壁に寄り掛かり、日の暮れかけた薄暗い空を窓ガラス越しに見ていた。
「三成!」
 清正がバタバタと廊下を駆けて、三成の元へとやって来た。人気の無い校舎内に、彼の声と足音はやたらと響いた。
「悪ぃ、ちょっと長引いた。今日はこれ作ってたんだ。一つやる。」
 そう言いながら清正は鞄をあさり、キルティングの素材で出来たラズベリー色をした小さなポーチを差し出した。

 恐らく、誰もが「詐欺だ!!」と思うであろうが、何を隠そう加藤清正は手芸部に所属しているのである。あのガタイ、あの見た目で……手芸部なのである(大事なことなので二回言った)。


 「…清正、俺は女子では無いのだからこういうものは要らんと何度言えば……。」
 三成は溜め息を吐くだけで、それを受け取ろうとはしなかった。既に三成の上履き入れや体操着入れは清正お手製の品である。週一ペースで何かしらを拵えて来る幼馴染みに、彼は少々辟易気味なのであった。
「何でだよ、iPodとか携帯の充電器とか用にって作ったのに。よくお前バッグん中でコード絡まってるだろ。」
 ぐい、と、清正は三成に押しつけるようにポーチを渡した。
「ちゃんと内ポケットも付けたぜ?それにほら、お揃い。」
 鞄からもう一つ、深緑色をした色違いのポーチを出して三成に見せると、彼はニカッと笑った。
「……下らん。」
 三成はもう一度深く溜め息を吐いてから、渡されたポーチを肩に下げた鞄にしまった。




 二人並んで校門を出る頃には、外は随分暗くなっていた。吹き付ける風も冷たい。
「もうすっかり秋だなー…。」
 そう呟く清正の横では、三成が寒さに体を縮こまらせていて返事をしない。

 「そうだ!今度、マフラーとか手袋編んでやるよ!」
 隣りを歩く寒がりのために、清正は名案とばかりに発言をする。色は何にしようか、毛糸は今いくらぐらいだろうか…とかぶつぶつ言いながら、既に彼の意識は防寒具を作製することでいっぱいのようだった。
「お前手編みの……?」
 ちまちま手を動かす清正を想像して、三成は堪らず吹き出してしまった。
「ふっ、はは…っ!」
「おい三成、何笑ってんだよ!」





 この調子では、三成の所持品ほとんどが清正の作品になるのも時間の問題かと思える。だが、それも悪くないか……と、ほんの少しだけ、三成は思った。

 彼が自分のためだけに編んでくれたマフラーや手袋は、とても暖かそうだから。




   ―おしまい―



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