残暑お見舞い申し上げます。(清三)


 大坂城では、大変珍しい光景が繰り広げられていた。



 石田三成が自室であおむしのように転がっている。



 いつもならば忙しく政務に励んでいるだろう彼が、着物をだらしなく着崩して部屋の最奥で寝転んだまま、気怠げにうぞうぞとしか動かないのである。勤勉で潔癖症な普段の三成からは考えられない姿である。

 「……おい。」
「何だ清正。室温が上がる、速やかに出て行け。」
「…暑いのは分かるがそりゃねぇだろ……。」
 そう、連日連夜猛暑日熱帯夜が続き、流石の三成もだっるんだっるんになっているのだった。そこに現れた清正も、酷暑に耐え兼ね随分と着物を崩して着ていた。
「知らぬ。どうせ今は込み入った情勢でもないし、急く用事もないだろう?」
「こんな調子だからな、お前が生きてるか確認しに来たんだよ。」
 うつぶせになったままの三成に清正が言う。
「…見ての通り生きてるぞ、心配はいらん。」
 僅かに顔を上げた三成の頬には、畳の跡がついていた。
「それにしてもなぁ…。石田三成様のこの姿、民衆が見たらブッ倒れんじゃねーの?」
 三成のすぐ横に、清正は腰を下ろした。
「知らぬ。倒れさせておけ。」

(…どうしよう三成が有り得ない程無気力になってる……。)
 清正はひっそりと息を吐いた。

 「と言うか様子を見に来るならば暑苦しい貴様ではなく涼やかな明智殿や爽やかな浅井殿なら良かったのにな…。」
 言いながら投げやりに寝返りをうつ三成。ついでに左近も暑苦しいのだよ〜とか言ってる。そして生まれる微妙な


 間。


 「…俺ってお前の何でしたっけ?」
「知らぬ。」



 なんだか悔しくなった清正は、暑い離れろと喚く三成を押さえ込んで、ぴったりと密着したのだった。




 生暖かい風が申し訳程度に風鈴を鳴らして行った、長月の昼下がり。清正と三成は今日も仲良しなようです。



   おしまい☆




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