強敵現る!?A


 他の男と入浴など、三成と良い仲である清正にとっては非常に面白くないことであった。

 しかも宿敵、小西行長とだなんて!!
「あの腹黒、三成に変なことしてねぇだろうな…っ!」
 吉継も一緒であるからそう心配はないだろうが、あまりに気になるのでわざと浴場の近くを通ってみた。しかし当然声も聞こえなかったし、様子をうかがい知ることは叶わなかった。
「クソ…っ!」
 苛々した気持ちを鎮めるために、清正は道場へと向かった。



 静寂に包まれた夜の道場で、清正が槍を振るう音だけが聞こえていた。もう半刻ほどになるだろうか。清正は一心不乱に槍を振り下ろし、汗をびっしょりかいていた。ふと出入口付近に現れた人影に気付くと、動きを止めてそちらに視線をやる。
「誰だ?」
「こんな時間まで鍛練とはな…。流石に感心せぬぞ。」
 訪問客の正体は三成であった。
「お前こそ、こんなとこに何か用かよ?」
 既に風呂を済ませてある三成は寝間着姿だった。この薄着の下の、白く美しい肢体を行長や吉継の眼前に晒したのかと思うと気分が悪くなり、いつにも増してぶっきらぼうな言い方になってしまった。
「用と言う用は無い。ただ、こんな時間に槍を振り回してる馬鹿の姿が見えたのでな。」
「嫌味を言いに来たなら帰れ。」
 清正は鍛練用の簡素な槍を握り直した。
「それだけのために立ち寄るか馬鹿。鍛練もいいが程々にしろよ。お前がへばっては秀吉様もお困りになるかも知れん。」
 そう言うと三成は、踵を返して道場から出て行こうとした。彼なりの気遣いであったと理解した清正は、急いで三成を引き止めた。
「おい、ちょっと待て!」
「何だ?」
「今日は、もう切り上げることにする。」
「ああ、それがいいだろう。」

 間近で清正を見上げた三成の顔が、急に曇った。
「……清正、汗だくではないか。風邪を引く前に着替えるか風呂で汗を流すかするようにな。」
「それくらい分かってる。」
 清正は手拭いで乱暴に汗を拭った。
「つーか…風呂……。」
「む?」
 ここで清正は、先程までの苛々の原因を、三成にぶつけてみることにした。
「行長と吉継と一緒に風呂入ってただろ?俺とはそんなことしねーのに。」
「お前とあいつらは違うからな。」
 しれっと答える三成を、清正は乱暴に抱き寄せた。風呂上がりの清い体を汗臭い体で、などどうでも良かった。




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