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持て余す痛み(清→三?)
三成と喧嘩をした。きっかけは何だったか。思い出せないくらいなのだから、非常に小さなことだったのだと思う。まぁ、小さな諍い程度はいつものことなのだが、今回は少し事情が違う。言い争ううち、あいつに辛辣な批評をこれでもかと浴びせられ頭に来た俺は、思わず奴を突き飛ばしてしまった。華奢な三成は、6尺ほど飛ばされ柱に強く頭を打ち付けた。小さく呻く三成。それを見て、俺は逃げるようにその場を立ち去った。
三成は、真っ直ぐ過ぎる。あいつが清ければ清いほど己のそうではない部分に気付かされ、糾弾されているような。あの男と向き合うとそう思ってしまうのだ。尊大な態度や不躾な物言いも勿論なのだが、そんな自分の小ささを見せ付けられることにも腹が立って、三成と衝突してしまうことがしばしばあった。
あいつとまともに顔を合わせないまま三日が過ぎた。謝ってやるつもりはないものの、打った頭は大丈夫なのか(あいつは顔と頭以外いいところねーよ!と正則が言っていたのを思い出して)、少し気になってはいた。
「秀吉様、三成を知りませんか?」
「おー三成か。あいつにゃあ、上杉との盟約をまとめてもらうために昨日から左近と一緒に越後に行ってもらっちょる!」
「越後…。」
「景勝殿も三成を信頼しちょるようだし、家臣の兼続とは莫逆の友じゃからな〜。向こうさんが許すなら、ゆっくりして来いって言ってあるんさ。」
にこにこと話す秀吉様。そう言えば、以前に上杉の筆頭家老や真田の次男坊が大阪城を訪ねて来たとき、三成は非常に嬉しそうにしていた。
(……俺には絶対見せないような顔で笑ってた。)
俺は左近のように頼られたりしないし、奴の数少ない友人達のように笑い合えたりなどできない。その事実を考えれば考えるほどに、胸の奥が疼いて酷く痛むような気がする。この痛みのやり場は、今の俺には分からない。
俺は一体、三成の何になりたいのだろうか。
じくじく、じくじくと。
ああ、今も。この脈打つ胸の痛みが、俺の心ごと感情ごと、腐り落ちてしまえばいいのに。
―終―
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