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続・お父さんは心配性!
嗚呼、殿……。以前は何をするにも左近左近、俺の後ろをくっついて来ては、二言目には左近、だったのに…。(※本人の証言のため多少の捏造が含まれている可能性があります。)
だのに今は、清正さんに夢中だなんて!
俺が蔵の影から見ているなんて露知らず、殿とあの害虫は楽しそうに会話している。…あの二人の背景に擬態語を付けるなら「キャッキャッウフフ☆」。うぜぇええ。俺の背景にはきっと黒い障気が怨念のように渦巻いているのだろう。
殿……、殿はもう左近と一緒にはいてくれないのですか?
「殿!」
「どうした左近、血相を変えて。何かあったのか?」
俺は遂に、直接殿に話をすることにした。
「俺と清正さんが崖から落ちそうになっています。落ちたらそうですね、絶対に助かりません。そんな断崖絶壁です。さて殿はどちらを助けますか?」
一息で今のセリフを言い切った俺に、殿がぽかんとしている。
「……意味が分からぬ。」
「だからですねぇ、目の前で俺と清正さんが死にそうなんですよ。どちらかしか救えません。そのとき殿はどちらを助けます?」
「二人共だな。俺なら二人共助けられる。」
ほぼ即答状態だった殿の答えは、非常に殿らしいものでした。そんなところも萌え。
…いやいや、そうではなくて……。
「…殿には可能かも知れませんがね、便宜上どちらか一人に絞って解答をお願いします。」
殿が少し考え込む。どきどき。
「左近を助けて、俺は清正と一緒に崖から落ちる。」
ええええええええー!!?ちょ…っ、あんまりでしょう殿!!
「…凄い顔してるぞ左近。ここに鏡があれば良いのにな。」
殿が珍しい虫でも見るかのような目で俺を見る。しくしく。
「別に、清正と共に死ぬことに深い意味はない。
……正直に言えば、俺にはお前もあいつも必要なのだよ。どちらか、など俺には難し過ぎる問いだ。」
「殿……。」
「どちらか一方しか救うことが叶わぬのなら、清正一人を生かしておくよりお前を生かしておく方が世のため人のためになろう。
……まぁ、そういうことだ。」
つぃ、と殿がそっぽを向く。その頬は紅く色付いていて。俺は思わず目の前の可愛い人を抱き上げていた。
「とーの〜!
ほ〜ら殿、高い高〜い!!」
「何をやっているか左近、降ろせっ!頭でも打ったのか!?」
「殿〜ぉ!」
やっぱりうちの殿がいちばん可愛い!!!
おしまいですよん!
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