「なんだ、寒ィのか」
「え」
そういえばくるりと茶色の大きな目がこちらを見上げた。
身長差が随分とあるからこいつは俺と話すときは決まってぐ、と顔を上げる形になる。
それが子犬みたいにみえて、がしがしと意味もなくその頭を撫でればぐしゃぐしゃになった髪を押さえながら小さく悲鳴をあげた。
「手だ。指先真っ赤になってんだろ」
「あ、ホントですね。真っ赤」
きがつかなかった、とつぶやくこいつは自分が耳まで真っ赤だってことにも気がついてないだろう。
小さな手を広げてまじまじと見つめている。
こいつは人のことにはやたらと鋭い癖に、自分のことにはとんと無頓着だ。
それはこいつのなにより悪い癖だ。
「手袋つけたらいいですかね」
手を開いたり閉じたりしながらそういってまた俺を見上げる。
よく見れば頬も寒さのためにうっすらと赤く染まっていた。
先日選んでもらったまふらーとやらが存外暖かいから貸してやろうと外しかけて、やめた。
「貸せ」
「わ、」
思ったよりも掴んだ手は小さくて、ひやりと冷たい小さな手はいとも簡単に俺の手の中に収まってしまった。
「こ、こじゅうろさん」
「こうすりゃ、あったかいだろ」
より真っ赤になった顔を見下ろしてそういえば、暫く言葉にならない言葉を発していた。
けれど、暫くして落ち着いたのかじっと繋がれた手をみたあと、顔をあげて少しだけ恥ずかしそうにようにゆったりと笑った。
「…ありがとうございます」
つぶやかれた甘い言葉に俺はまた小さな手を壊さないように少しだけ繋いだ手に力を込めた。






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