もう会ってから結構な時間が経つけれど、隣にいる信長さんに未だに慣れない。
どうしてこんなときに限ってリビングに誰ひとりいないんだろう!ばかばか!みんなのばか!
下を向いてそんなことを考えてると、ちりりと首筋に視線を感じた。
まさか、と思って視線をあげれば、やっぱりばっちりと信長さんと目があってしまったわけです。
まさに蛇に睨まれた蛙。そらせないうえに、何を話せばいいのかわからないので沈黙が重い。
あわ、わわわわわどうしよう!と思ってるときだった。
「…菓子は、」
「ひ、ひゃい!」
「……」
あんまりにも突然で驚いたものだから、声が裏返ってしまった。それに驚いたのか信長さんが黙ってしまった。
「わわ、」
顔に一気に熱が集まる。きっと私の顔はこれ異常ないぐらい真っ赤だろう。
笑ってくれればまだ救われるものの、織田さんは私の顔を凝視したままなにもいってはくれない。
底が見えない、真っ黒な瞳に捕われて、視線さえも反らせない。
なにかいわなきゃとぱくぱく口をさせていると、いきなりなにかが私の口の中に放り込まれた。
「む、ぐっ!」
「…」
咄嗟にもぐもぐと口を動かせばじんわりと甘い。
「ん、」
おいしい。これなんだろ、そういえばさっき信長さん菓子っていってた気がする。
なんて、考えているうちに、ぽすんと頭の上に大きななにかが乗った。
顔をあげれば顔こそいつもの怖い顔だったけれど、どこか優しい目をした信長さんが私を見下ろしていた。
「そう、固くならずともよい」
「…は、はい!」
力いっぱい返事をすれば、信長さんは懐をごそごそと手で探って、小さな巾着を取り出した。
使い古されているそれは信長さんにはひどく似合わなかったけれど、それを気にする様子はなく信長さんはその口を緩めてがさがさと中身を取り出した。
そこから転がり落ちたのは、色とりどりの金平糖だった。
「わ!」
「…」
綺麗!といおうとした瞬間にぽいとそこからまた一粒私の口に放り込まれて、もぐもぐ口を動かす。
またなにかいおうとすれば、開かれた口にぽいと再び新しい金平糖が投げ込まれる。
「ふむ、お前は餌付けしたくなる生き物だな」
「む、ぐ!」
その言葉に思わずむせそうになった瞬間に、信長さんはにやりと笑った。
「愛でたくなる、と言っておるのだ」
「な、なな!」
こんな返事に困る時に限って、金平糖を投げ入れてこない。
「の、信長さんって怖いんじゃなくて意地悪なんですね」
そういえばはじめて信長さんが私の前で声をあげて笑った。







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