この体温はひどく厄介だと、頭の隅で理解していた。いつも部屋の中にはあまりいないくせに体温が高く、服の上から触れられてもじんわりとこちらにその熱が届く。そのたびに、頭のどこかがぼうっとしてそのまま眠ってしまうようなそんな感覚に陥る。
「…」
くん、と髪を軽くひっぱられて眠りに落っこちそうになっていた意識を慌てて覚醒させる。横を見れば、首をかしげてこちらを見つめている小太郎の顔があった。
「眠く、ないよ」
ぽかぽかと暖かい日だった。日当りのいいソファに座っているといつも間には小太郎が横に来ていた。小太郎はただ私の肩に額を押し付けて猫のように甘える。
そして私はゆるゆると頭を撫でているうちにひっついているところから伝わる小太郎の体温と指先に感じるふわふわした猫っ毛にどうしても気持ちまでもがふわふわしてしまう。
しかし結局その手の暖かさや体温の心地よさにほだされてやはりしばらくすればまたうとうとし始めてしまうのだ。
そのうちにいきなり小太郎が私の身体をグいっと引き寄せたと思うと、ぽすんと、いつもとは逆の形で私の頭を自分の膝の上にのせた。いわゆる、膝枕の形だ。
「こたろ?」
眠たさのために、どこか舌ったらずな声で名前を呼べば小太郎はかすかな笑みを口元に浮かべて私の頭をなでた。髪を指に絡めながら優しく撫でられて、赤ん坊をあやすようにとん、とんと脇腹あたりを一定のリズムでたたかれれば、たまらなかった。
そのうえ、もっとくっついた身体から心地よい体温が伝わってきてとろとろと私を眠りの世界につれていこうとする。
「…こたろ」
名前を呼べば、返事をするこえこそないもののいつもなぜか小太郎が返事をしてくれていると感じる。それがなぜか私はひどく好きで、時々意味もなく小太郎の名前を読んでしまうのだ。
きっと小太郎はそれをわかっているのにただ静かにいつもそうやって声のない返事をしてくれる。
頭をなでてくれる感触にああ、私は今甘えているんだと急にひどく意識した。その瞬間に熱を持ち出した顔を隠すために顔を腕で隠しながらそっと目を閉じた。
「おやすみ」
「…」
やはり返事はないけれど、すり、と頬を指の背で撫でられてとろとろと暖かいものに、胸が満たされる。もう眠りの世界に半分引き込まれた状態で額に暖かい何かが押し当てられた気がしたけれど、それが何か確認する前に私の意識はすとんと、眠りの世界に落ちてしまった。



(それがささやかなキスだとしっているのは、彼ひとり)

嘩鬼さんへ!



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