はあ、と空に向かって息を吐けば白くに変わって、空気に溶けた。
それを見上げていれば、横からも白い息。
釣られて視線を落とせば、もう見慣れた少女が口を開けたままこちらを見上げていた。
「寒いですね」
「そうだなぁ。でも、マジで家にいてよかったんだぜ?こんびに迄の道は覚えたし、もうお金の使い方も心配いらないだろ?」
寒さのために赤くなたってしまった女の頬に手を添えて、温めるように親指で軽く擦ってやれば、くすぐったそうに目を細めた。
触れても警戒するわけでもなく、こうしてすんなりと受け入れられることに、じりと胸の奥がむず痒くなる。そのまばゆいばかりの無垢さに、時々目が眩む。
「や、そんなに弱い身体はしてないですし、それに、実はこういう日だからこそいいものがあるんです」
そういってごそごそと彼女は手に持っていた袋からふたつ、白い紙で包まれたものを取り出した。
そういえば、先程彼女が何を買ったのか、自分は知らなかったなあとのんびり考えた。
取り出されたそれからもくもくと湯気がたちのぼっていることから、それがあたたかいもの、そしてふわりと漂ってきた匂いにそれが食べ物であることが察せられた。
「はい、これ慶次さんの分」
「うおっと、あつっ!」
受け取った瞬間、覚悟はしていたものの予想外の熱さに思わず声をあげれば、彼女がくすくすと笑う。
「それ肉まん、っていうんですよ。中国のおまんじゅうみたいなものです。私のはピザまんっていって中身を南蛮風に改良したものなんです」
「へえ」
「私寒いとき、これを歩きながら食べるの好きなんです。なんだかしあわせーって感じがして」
そういって、自分の分を取り出して笑うその横顔があまりにも幸せそうで思わず俺も笑ってしまった。
「しあわせ、な。たしかにわかる気がするよ」
いいながら、噛み付けばじわりと肉の味が口の中に広がる。熱いけれどなかなかに、おいしい。
「あっでも歩き食べは行儀が悪いから小十郎さん達には秘密ですよ!」
慌てて、そう付け足すその必死さがかわいくて今度は声をあげて笑った。
「ははっ、わかったわかった!…でもそのかわりといっちゃなんだが、そっちひとくちくれないか?」
そういって小さな手の中にあるぴざまんとやらを指差せば、一瞬きょとんとした顔をしたあとに、笑った。
「口止め料ってことですね」
「そうゆうこと、」
そういってためらいなく差し出されたそれに、やはり小さく胸が焦げる音を聞いた気がした。



ためらいなく差し出されたそれから感じるのは信頼。
もしもこの胸の中にある感情をさらけ出してしまったならば、君はどんな顔をするのだろうか。




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