*現パロ






最初に見た時綺麗な人だなって思っただけ。
その綺麗な顔には似合わない傷も含んで綺麗だと思ったんだ。



その人はいつも同じ電車で同じ時間に乗っているその子。
有名な私立高校の制服を身にまとっていていつも扉側に居て空を眺めている名前も知らない子。



別に狙って同じ電車に乗っている訳じゃないんだけど、車両も偶然一緒になる。


乙男と良く言われる俺、フリオニールは運命なのかとドキドキしてたりもした。



その自称運命が本当に運命になったのはある寒い日の事だった。





朝寒い寒いと思いながら駅のホームで電車を待っていたら隣に気配を感じた。
ふと顔をそちらの方に向けると隣にあの子が立っていた。



「……ッ。」



至近距離で見る彼は遠くで見るより数倍綺麗だった。
目を見開いて数秒間魅とれてしまった。
もっと見ていたかったけど顔が真っ赤になりそうだから逸らす。
――今日は良い事ある!
確信した。このまま電車内でも近くに居るかと考えワクワクしていた。今思うと自分気持ち悪いな――……


寒かったけどあの子を見たお陰か一気に体が火照ってしまって寒さなんか感じず電車を待った。
しばらくして電車がやって来て俺は電車に乗り込む。

あの子の近くに居たいなーと思ったけど流石に気持ち悪いなと思い止めて彼の居ない方の扉側の近くに居る事にした。



――あれ?



あの子は俺の横に居た。
今日はこちら側なのかと思って得に気にせず立っていた。
朝は通勤ラッシュで人も多くその子とはかなり密着する。
――どうしよう、ドキドキが伝わりそうだ――



少しでもキリッとしておかないと顔が崩れて鼻血が出そうで怖いな。
そう思いながら服をグッと持つ。


「ぁ……」
「?」


隣から小さな声が聞こえた。
電車の中は結構うるさいけど聞こえたその声。
小さかったけど凄い透き通った声だった。
誰だろうと思って俺は周辺を見回して見た。
――気のせい……か


そう思ってまた俺はボーッとする。



「ぁ……んッ」



――気のせい……じゃないな、これ良く見ると隣のあの子が少し震えていた。
もしかして、痴漢か?


俺はその子の下を腰元を見ると確かにその子の手じゃない手が置かれている。
手は毛深くて中年のおじさんの手だ。

その手を見た瞬間イラッとした。
何か、むかつく。

満員電車だしあの子も下手に動けないんだろう。
幸いおじさんも俺の近くに居る。
今なら、こいつの手を掴んで辞めさせる事も出来る。
だけど、この子が可哀想になる。

男の子が痴漢って。


うんうん悩んでるとあの子が俺の方へ顔を向けた。
顔を真っ赤にして涙目で口パクで《助けて》と助けを求めた。

――なんて馬鹿なんだ自分は。
助けてって言う前に助けなくてどうするんだ!


俺はその子を安心させる為に笑顔を見せた。
もう大丈夫だから



「ちょっと、おじさん」


けして大きくない声でおじさんへと言葉を向け、手をその子の腰から離した。

「警察に突き出しますよ。嫌だったら次の駅で降りろ」
「……ッ」



俺がそう言った瞬間駅に着いて、その男は風のように去っていった。
丁度ここの駅は人がたくさん降りていく駅であり、一気に電車内から人が居なくなる。
その子は眉間にしわを寄せで下唇を噛みしめていた。


「大丈夫だったか?」
「……あぁ……」
「座ろうか」


俺は近くのイスに腰を下ろす。
その子も恐る恐る座る。

静かだ。



「あ、あの」
「ん?」
「助けてくれて有り難う。頼れそうな奴があんたしか居なかった」
「有り難うなんて……君が助けてって言わなかったらどうしようかとずっと思ってた」
「でも、助けてくれた。有り難う」



そう言われてなんだか嬉しくなった。
昨日まで話せなくて見るだけで良かったのにこんなに進展してしまうなんて。

名前も分からない。
連絡先も知らない。
この先どうなるかも分からない。


「お礼したいんだが……これから暇か?」
「え、あ、うん、暇だ、よ」


ごもった喋り方になってしまう。
こんなにも自分はヘタレだっただろうか。
うん、ヘタレでした。



「あんたさ、良く電車で一緒になるよな」
「え!?知って!?」
「何か、格好いいなって思ってた」
「お、俺も綺麗な人だなって……」






始まりは電車の中でした
  

*PREV END#

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