「ジーターンー!」
「引っ掛かったな!」






またか――
俺はそう思って壁にもたれ掛かってため息をついた。
今日で二回目か。




「ん……うわッ!?」




急に体を支えるモノが無くなったと思ったら体が勢いよく倒れた。
ん?え?壁が無くなった?
そんなバカな話があるかと思い、俺は上半身だけ起こして辺りを見回した。
辺りをを確認するとジタンが腹を押さえて壁をバシバシと叩いている。

まさかと思って俺はジタンの近くに行ってみると顔を真っ赤にし笑いを堪えていた。



「ジタン……」



怒りを露にしないよう優しく言ったつもりだったけど結構怒りの感情が籠っていた声でジタンの肩を掴む。
すると笑顔で



「デジョンで壁消してみたらどうなるかなって思ったらすげぇ派手にこ、転んだな!」



そう言って今度は声をあげてながら笑い逃げた。
カンだけいいみたいだな、あいつ。
俺はガンブレードをしまってその場に座り込んだ。



「最近ジタンの悪戯ひでぇよ!」
「言っておくが、あんたへの悪戯は子供でも分かるような悪戯だ」
「え、嘘だ!」



落とし穴だったり。
明らかにあそこだけ土の色違うのにジタンの誘導でずっぽりとはまっていく。
何であんなにも気付かないんだろうか。
戦いの時は、カンが良いのに何で日常は抜けているんだ。
戦いの時はそれはもう、目が今と全然違って剣を振り回す姿は格好いい。
べ、別に俺が格好いいって思ってるわけじゃなくて、誰かが言ってたんだ!



「スコール顔赤いけど……」
「き、気のせいだ」



確かに、最近ジタンの悪戯はひどいな。
元気なのは良いんだが、俺は年上だ。
年下にからかわれて、そのままってのは俺は気にくわないな。



「……なあスコール」
「どうした、真面目な顔して」
「仕返し……しねぇ?」
「……いいぞ」
「え!?ほんと!てっきり断られるのかと思ってた」



俺はそんなに、曲がった事が大嫌いなクソ真面目な奴じゃない。
やられたらやり返すのだって俺だって普通にする。



「どうやって仕返しする?」
「落とし穴で良いだろ」
「えー、普通すぎねぇか?」
「無難だからこそ引っかかった時の屈辱は何とも言えないだろ?」
「……俺何回引っかかったんだろうな」







と、いう事で俺達は落とし穴を掘った。
これは凄い出来かもしれない。
掘った後が全然分からないし、違和感な部分も一つも無い。
これなら、ジタンも普通に落ちるな。



「これで完成だな!」
「ああ」



俺とバッツは顔の周りと服を泥だらけにして笑った。
これでジタンが引っかかったら何とも言えない。
この年になって落とし穴を引っかけるのにワクワクしてたりする。
言わないが。




「スコール、スコール!」
「なんだ?」



バッツは、ニッと笑って人差し指を口元に持ってきて


「しーっ、な!」



――キュン
ん? 
何だ、今の。

キュンって、キュンって何だ。
……ドキッでは無くてキュン?



……?




*PREV END#

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