小さな頃おひさま園のみんなで七夕に短冊に願い事を書いて笹に飾ったね。
晴矢と風介は確か七夕ってクリスマスツリーみたいなもの?なんて言ってたっけ。

「これにお願い事書くんだよ」
「へぇー」

二人にそう説明すると慣れないひらがなやカタカナを使って短冊にお願い事を書いた。
風介は、確かみんなとサッカー楽しくやれますようにだっけな?

「晴矢は?」
「……見せない」

晴矢だけは見せてくれなかったよね。何回頼んでも俺以外の子が見せてって言っても晴矢は見せてくれなくて。
笹に飾る時は見れるかな、って思ったら姉さんに頼んで俺達の手の届かない一番上に付けてもらってた。



あれからもおひさま園のみんなで七夕をやったけど結局晴矢の願い事は今も分からないままだったりする。




「おい馬鹿動かすな」
「俺は動かしてねーって!」

あっちにユラユラ、こっちにユラユラ。
晴矢と風介に笹の固定を頼むのはまずかったかな。

ジェネシス計画が終わってようやく安定した生活が送れるようになった。
やっと安定したと思ったら俺は響さんから日本代表の選考試合に呼ばれた。
まったくゆっくり出来ないけど円堂君に会えるからドキドキしてたりする。

「あーやっと終わった」
「お疲れ様晴矢」
「あいつ終わったらすぐアイスだぜ?ありえねぇ」

晴矢はブチブチ文句言いながら俺の横に座り短冊を一枚手に取る。
人数多いからみんなの分作るの大変なんだよね。
本当はこういう事姉さんが仕切ってやるんだけど何日か前から急に居なくなっちゃって。どこに行ったのやら。
そういえば砂木沼やら茂人も居ないなぁ。サッカー遠征かな?

「毎年願い事書いてるけど当たらないんだよな」
「晴矢の事だから無理なお願い書いてるんじゃないの」
「るせー」

見せてくれないけど晴矢は毎年一生懸命お願い事を書いている。
本当何書いてるんだか。

「ねー何で見せてくれないの?」
「プライバシーの侵害だろ」
「何それ意味分かんないよ」

……去年ならここで引き下がってた俺だけど今年は引き下がらないからね、晴矢。
短冊に集中してると見せかけて俺はちらりと晴矢の短冊を覗き見る。

「ヒロ……トがみ?」
「うわぁあああぁあ見るなよ!」
「俺が何?」

晴矢は、うっ、と言葉を詰まらせて視線を合わせない。
俺がみ?みってなんだろう。
っていうか晴矢の短冊なんだから晴矢の願い事書けばいいのにね。

「ヒロトが見せてくれるならいいけど」
「本当!?はい!」

俺はサッと自分の短冊を晴矢に渡す。
晴矢は短冊を穴が開くほど見つめて俺に向かって大きなため息をはいて俺に短冊を返す。

「みんなが楽しく暮らせますように……って」
「何で悪い?」
「悪くねーけどよ、毎年それだろ?自分の願い事書かないわけ?」
「晴矢だって俺の事書いてるじゃん。ほら見せて!」

チッと舌打ちをした晴矢は俺に短冊を渡す。どれどれ……

「……晴矢」
「んだよ」
「まだ俺代表に決まったわけじゃないんだからね」

ヒロトがみんなとイナズマジャパンのみんなと仲良くなれますようにだってさ。
ますます代表入りしなきゃって思ったじゃんか、馬鹿。

「あのね晴矢」
「んー?」
「晴矢はさっき自分の願い事は書かないの?って言ったけど実は一度だけあるんだよ。自分の、凄い叶えて欲しいお願いが」

あれは初めての七夕だったかな?
風介がみんなとサッカー楽しくやれますようにってお願いをしたあの最初の七夕。
本当に小さかったから何をお願いしていいかも分からなかった。
迷ってたら姉さんが、ヒロトは今何が好きなの?って。

「それでね俺は晴矢が好きですって書いたの。これじゃあお願いじゃなくて」
「告白だな」
「小さかったしね」

今思い出すとこれ無茶苦茶恥ずかしい願い事かも。
でも小さい時、晴矢晴矢って言いながらいつも晴矢の事追い掛けてた。
晴矢が俺に向けてくれる笑顔が凄く大好きだった。

「ヒロト」
「なあに?」
「これやる」

クシャクシャになった色紙。
色も所々剥げてて元の色が分かりにくい程古い。
紙の左下には年月日が書いてあった。
この年って確か初めて七夕をやった年だよね。

だとすればあの時教えてくれなかった願い事が書いてあるって事か。
願い事が書いてある裏をペラリとめくる。

「晴矢」
「なんだよ」
「この願い事って今も?」
「当たり前だろ」







ヒロトが好きだ







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