10月




高校1年10月








二学期ってのはイベントだらけなんだよなーと校内をうろうろしながらぼーっと考える。
先月は体育祭と球技大会だったし、今月は文化祭。お祭りばっかでさすがに疲れて来るって入学前には思ってたけどヒロトと一緒ならって思うと疲れるなんて気持ちはどっかに飛んでいったわけだ。

と、いうわけで今は文化祭当日です。

「風丸くーん!」
「おおー」

俺たちのクラスは喫茶店をやる事になった。
別にメイド喫茶!ヒロトのメイド姿……!なんてイベントがあるわけでもなく普通の喫茶店。メイド喫茶!女装喫茶!なんて案もあったっちゃーあったんだけど、予算がな。
喫茶店をやるだけでも結構費用がかかるのに衣装代なんて……という事で普通の喫茶店に。
ヒロトが体育祭の時にチアガールの格好したからなぁ、あの格好が好評でクラスの男子がまたやってくれないかな、って思ってたらしい。
でもヒロトのあの格好は俺の前だけでやればいいんだ。

「それじゃ行くか」
「うん!俺お腹へっちゃったな、何か食べたい」
「じゃあ何か食いに行くか」

午前と午後で仕事が分かれてて俺とヒロトは午前仕事。
午前は朝ご飯代わりで来る人が結構多かったかな?
ヒロトが逆ナンされててちょっとイラッとしてしまったりもした。
俺が仕事で話せないのに初めてあったお前がヒロトと話すなんて……と。ヒロトはホント女にも男にもモテるなーって思いながら。

「文化祭だし油モノが多いかもな、ヒロトお腹大丈夫か?」
「大丈夫だよ、あ、たこ焼きだよ!半分こしよう!」

俺の側からさっと離れてたこ焼き売り場に一直線。
見た目細いのに凄い食うからなーヒロトは。一緒に住んでビックリした事の一つだ。
でも別に食費がやばいって事にはならないしちょうどいい感じだ。

「風丸君ー!20円貸して、足りないー」

遠くからヒロトが俺に向かって叫んでる。
あーもー俺が今日はおごるって朝言ったのにー。

「あ、ごめん、20円あった!」
「ったく」

ホント可愛い奴だなぁ。





「俺たこ焼き好きなの、風丸君は?」
「俺はたこ焼きのたこが好きかな」
「俺も!たこ大好き!」

校内を歩きながらヒロトはせっかく丸かったたこ焼きの中からたこだけを出して食べ始める。
ちゃんと外も食べろよ?っていうと、はぁい、なんて軽く返事をして。
ぷすり、とたこ焼きをさして俺は目の前の店に気づいた。

「ヒロト」
「なあに?」
「お化け屋敷だって、入る?」
「……え……」

タコを食べていた手が急に止まって足も止まる。
俺、まずい事言ったか?……まさか。

「もしかしてヒロトってお化け苦手なのか?」
「お化けは嫌いじゃないよ!うん!俺霊感ないし何も見た事ないもん!行こう!」

最後の一つを半分こしてゴミをゴミ箱に捨てるとヒロトは俺の手を握ってお化け屋敷へとずんずん入っていった。
ちょ、ちょ、手、手握っちゃったよ!?
なんて思ってると、ぴたりと先陣を切っていたヒロトの足が止まる。

「どうした。ヒロト」
「か、風丸君先に行ってくれる?俺ちょっと、あれだから」
「あれって何だよ」

俺はふっと吹き出してそのまま俺が前に出て歩き出す。手はそのままで。
ヒロトは別にお化けが嫌いって訳じゃなさそうだ。
お化けが出てきても、わ、って驚くだけだし。
んー……あ、そういえばヒロトって夜になるとリビングから一歩も出ないよな。
お風呂場に移動する時は俺と一緒だし。恥ずかしながら実は一緒にお風呂に入っているのです。
トイレも暗くなってからは行かないし……。

「なあ、ヒロト」
「ん?」
「ヒロトってもしかして暗いのが怖いのか?」
「え、ええ!?そ、そんな事あるわけないでしょ!?」

ほう、と俺は呟いて、さっきまで握って居た手をぱっと離してヒロトから二歩ほど距離を取ると、ヒロトは顔を真っ青にして

「ま、待って!行かないでよぉ!」
「ほら、ホントの事言えよ、そしたらそっち行くから」
「暗いのが怖いの!前が見えないから怖いんだってば!お風呂も一緒に入るのは暗いのが怖いから!」

だから早くこっち来てよ!なんて大声出して。
公開処刑だよ、こりゃあ。
俺がヒロトの元に行くとぎゅっと抱きしめられて。

「風丸君の馬鹿!」
「ごめんって」

暗いのが怖くてたこ焼きのタコが好きでちょっと抜けてて、そんなヒロトがやっぱり俺は好きなんだなーって再確認した。





俺と彼の高校生活



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