6月







高校1年生6月






しとしと雨が降っている。そんな毎日を過ごして居るとやっぱり毎日気持ちよく過ごせないわけで。
朝起きて外を見てたら晴れていた。だから傘はいらないなーなんて思って。姉さんに、今日雨降る?なんて一応確認したら、降らないでしょう、なんて言ってた。
でも、風介だけ、私の左目が雨を感知している、絶対に雨が降り注ぐぞ、なんてわけの分からない事言ってたから無視してたけど……。

「本当に降るなんてなぁ」

外は土砂降り。まったく嫌になっちゃうなぁ。
傘置き場に傘も何も無いし、今日日直だったし、校舎に誰も居ないし、先生もほとんど残ってないし何処に居るか分からないから傘も借りれないし。
とりあえず雨が止むまで待つしかないのかなー。

あ、そうだ、園の誰かに傘を持ってきて貰えばいいんだ!
そうだそうだ、何をやってるんだ、俺は。
俺はカバンから携帯を探……探す……。な、ない。

運悪く今日俺は忘れてしまったようだ。なんて不幸なんだ。

やっぱり止むしかないのかなぁ。教室で大人しくしてるか……。

「基山君?」
「え?」

教室でボーッとしてたら誰も居ないはずなのに声を掛けられた。
……誰だろ、クラス一緒の子かな。あんまり覚えてないや。もう6月なのにね。

「こんな遅くまでどうしたの?」
「日直だったんだけど雨が凄くて雨宿りしてたの」

んー、彼女は俺の事を知ってるのか。
でも俺は知らないっていうね。申し訳無いなー。

「傘無いの?」
「うん、だから落ち着くまでここに居るの」

この子も俺の事なんて放っておいて帰ればいいのに。
俺はそんな事をボーッと考えながら窓の外を見ていた。まだ振ってるなぁ。

「私傘持ってるの、も、もし良かったら一緒に――」
「ヒロト遅れてゴメンな」

俺と彼女が、え?と同時に声を上げて声のした方を見た。
水色のサラサラとした髪の毛の彼。風丸君だ。
あれ?今日先に帰ったんじゃないの?

混乱する俺の近くにズンズン風丸君はやってきて俺の腕を掴んで女の子の方に振り返った。

「ゴメンね、俺ヒロトと帰るから。傘狭いでしょ?」
「え?あ、その」

ばいばい、と風丸君はその子に挨拶をして俺を連れて教室を出て行く。
風丸君は早足で廊下を歩いていく。早いよ、風丸君。
俺は息を弾ませながら風丸君に引かれていく。ついて行くので精一杯。
靴箱がある所まで行くと風丸君はピタッと足を止めた。

「風丸君……?」
「ゴメン、俺……」

あーもー、と風丸君は呟いて頭をがしがしと掻き回した。
そして俺の胸へと頭を預けて、ごめんって言う。

「俺なんかあの子にヒロト取られそうで嫌だった」
「俺は誰にも取られないよ?」

そうだよな、ヒロトは鈍感だもんな、なんて言ったりして。
鈍感って……俺が?鈍感になる要素が何処にあったのだろう。
でも、とりあえず風丸君は怒ってはなかったけど、嫌な気持ちになってたって事なのかな。

「風丸君は俺が日直終わるまで待っててくれてたの?」
「ヒロト傘無いだろうなって思って」
「そっか、有り難うね、……風丸君、一緒に帰ろ?」
「……うん」

俺達は靴を履き替える。
風丸君が大きな傘をぱんっと開く。おお、水色だ。風丸君っぽいなぁ。
俺の傘は赤色。今は持ってないけれどね。この前風丸君と帰った時に、ヒロトの色みたいだなって言ってくれた。

「ほら、入れよ」
「じゃあお邪魔します」

ひょいって傘に入ると結構広かった。男二人なのに結構広いんだなー。
歩き出すと雨がもっと強くなってきた。あのまま教室に居ても帰れなかっただろうなぁ。
風丸君に感謝感謝。

風丸君が俺に今日あった事をサラサラと話してくれる。
その顔を俺は斜め下から眺める。本当に背が伸びたんだなぁ。俺より高いし。
何で俺は全然伸びないんだろうなー、いつかあの小さかった木暮君にも抜かされてしまう程身長があまり伸びていない。

「肩濡れてないか?」
「うん、大丈夫だよ」

風丸君はよかった、って言ってまた話し始める。
でも、男二人でこんなに広いっていうのもおかしいなぁ……俺はふと風丸君の肩を見ると凄い濡れていた。
俺にスペースばっかり作って風丸君の入るスペースが全然無くなっていた。
俺は傘を忘れてこの傘は風丸君のなのに、何で風丸君が濡れるんだ!

「ちょっと風丸君!」
「ど、どうしたんだよ、ヒロト」
「もっとこっち寄ってよ!風丸君が濡れてちゃ意味ないでしょ!」

そう言って俺は風丸君の身体を自分の方に引き寄せた。
よし、これで濡れないね。

「ち、近くないか?」
「近くないと濡れちゃうでしょ?」

男同士でも近くても濡れたら風邪引いちゃうんだから!
そう言った俺は次の日カゼを引いた。



俺と彼の高校生活



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