小説 | ナノ





ヒロトに悪い虫が付いている。
緑の悪い虫だ。常にヒロトの周りを飛んでいるあの虫。

「ヒロト!一緒にサッカーやらないか?」
「うん、いいよ」

ほらまた

「ヒロート!」
「ちょっと、急に抱きつかないでよー」

ま、また……

「俺ヒロトの事好きだよ」
「ん?ああ、俺もリュウジの事好きだね」

もう我慢ならない!
俺とヒロトは付き合ってるんだぞ!
まだ俺だってヒロトに抱きついたりした事無いのに、緑川リュウジめ。
と、いう事で緑川を呼び出そう。
大人げない先輩とかそんなのはもうない。
緑川にヒロトを取られちゃうって思ったら居ても立っても居られなかったんだ。




「で、何か俺に用かな?」
「お前、ホントにヒロトの事好きなのか?」

俺がそう言うと緑川は、ああ、とフッと笑いながら言った。
何がおかしんだ。

「当たり前だろ?俺ヒロト好きだもん。おひさま園の時からずっと好きだ」
「俺だってヒロトが好きだ」
「でも俺の方が好き歴長いんだぞ」
「そんなの関係無いだろ!俺とヒロト今付き合ってるし」
「……はい?」

……もしかして緑川って俺とヒロトが付き合ってる事知らないのか?
結構オープンにイチャイチャしていたつもりだったのに。
もっとオープンにイチャイチャしていれば良かったかな。

「そんな……風丸とヒロトが付き合ってるって。え?マジで」
「マジだよ、3ヶ月くらい前かな」
「結構前だな。でも良いよ、奪ってみせるし」

そう自信たっぷりに答えるあいつ。
緑川は何を考えてるか分からない。
あんまりヒロト以外と話してる姿も見ないしな。

「何て言ったって俺はヒロトの小さい時から知ってるしな」
「小さい時って……そんなの過去の話じゃないか」
「……小さい頃のヒロトは甘えん坊で泣き虫」
「今と変わらないな」
「夜寝る時真っ暗が怖くてよく俺の布団に入りに来た!頭を撫でると嬉しそうに微笑んでくれるんだぞ」
「なっ、ずるいぞ!俺もまだ一緒に寝た事無いのに!」

俺がビックリして言うと、俺以上に緑川が声を上げてマジ!?と叫んだ。
そ、そうだよ、付き合って3ヶ月だけど手も繋いだ事無いんだよ。
イチャイチャって言ってもお互いに好きだよ、って言い合ったり、サッカーしたり何だよ。
どうせヘタレですよ。

「でも寝た事無いからって俺は譲らないからな」
「俺だってヒロトを渡す気なんて無いぞ」
「何やってるの、君たち」

俺と緑川が戦闘態勢に入っていると俺と緑川の間にヒロトがいつの間にか立っていた。
忍者か、お前は。

「あ、いや、緑川と勝負してたんだ」
「勝負なんの?」
「どっちがヒロトの事好きかって事」

……は!?こ、こいつ何言ってるんだよ。
間違ってはないけど本人に聞かれると凄く恥ずかしいんだが。

「ヒロトは俺と風丸どっちが好きなんだ?」

緑川ホント何言ってるんだよ。
ズバズバ聞きすぎだろ、ヒロトも恥ずかしがって……無い。
もっと恥ずかしがってくれないかなぁ。

「んー、俺は二人とも好きだよ」
「……はぁ」

やっぱりどっちとも好きだよ、って返事するかと思ったよ。
でも、頭の中で少し、風丸君の事が好きだよ、って言うかと思ってたけど、現実は甘くないなぁ。

「……でも、風丸君は愛してるかな」
「ヒロト今何か言ったか?」
「別に何にも言ってないよ」




第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -