小説 | ナノ


時間軸はFFI







ライオコット島に来て随分経った。
環境に慣れたおかげか、夜はすぐ眠れるし気候も丁度良いと感じる。
後、時間配分も上手く出来るようになった。
最初の頃は、休憩時間も食事後の自由時間も何をしていいか分からずぼーっとしていた事が多かったけど、最近は誰かの部屋に遊びに行ってトランプをしたり、明日の練習メニューを鬼道君と監督と一緒に考えたり色々するように。



今日は暇だったから風丸君の部屋に遊びに行く事にした。
内緒だけど実は俺と風丸君は恋人同士だったりする。ライオコット島に来る前に告白されて、俺も実は好きだったんだ、と返事をすると風丸君ははにかんでた。
俺は風丸君の笑顔が好きだ。
……まぁ、以前風丸君には色々酷い事をしたと自分でも思う。
でもあの時正直風丸君の事は全然目に入ってなかった。
円堂君円堂君、円堂君だった俺は周りの人などジャガイモだったのだ。
でも、こうして円堂君以外の人間を見れる機会があって改めて風丸君と言う人の笑顔を見た時ぞくっとした。
直感で「ああ、俺はこの人をきっと好きになる」って思ったのかもしれない。


まぁ、そんなわけで俺は今から恋人の部屋に遊びに行くという事で若干緊張している。
だって練習はFWはFW、DFはDFで別れて練習してるから俺達は練習中はなかなか顔を合わせられない。合わせられるのは……そうだな、朝ご飯の時と休憩中か、そして今の晩ご飯後の自由時間か、そのくらいしかない。


「風丸君ー」


風丸君の部屋の前で名前を呼ぶと1秒も経たないうちにドアが開けられてまんべんな笑顔で


「いらっしゃい」


と俺を部屋に招き入れる。
さすが疾風の異名をもつ彼だ。
彼の部屋は片付いていて、昨日遊びに行った木暮君の部屋よりかなり綺麗だった。
木暮君は脱いだ服は脱ぎ散らかしっぱなしで、ものはあっちこっちに散らばってたからまず遊ぶ事より片付けを優先した程。
でも風丸君は……ああ、元々荷物が少ないのかな?


「まぁ何もないけどゆっくりして行けよ」
「勿論そうさせてもらうよ」


風丸君はベットに座っていて、俺をその横へと促す。
はいはいそこに座るよ、そんな笑顔で俺を待たなくっても。
そんな彼に苦笑するけど心なしか俺は嬉しい。


「ねぇ、風丸君」
「なんだ?」
「あやとり出来る?」


俺の唐突な質問に風丸君は目が点になった。
そりゃそうだよね、恋人との今日最初の会話があやとり出来る?なんて。
ロマンもへったくれもありゃしない。


「あやとり、って。あやとり?」
「うん、あやとり」
「何でまた急に」
「昨日木暮君に教えて貰ったんだよ。あやとり」
「ふぅん。あやとりねぇ……。……出来る……と思う」
「えーホント?」
「ホントだって。じゃあやってやるよ」


俺は昨日木暮君から貰った赤いヒモを風丸君に渡すと一人でちゃっちゃと手を動かして行く。
そして、出来た、と嬉しそうな顔をして完成した作品を俺に見せる。


「ほら、ホウキ!」
「……」
「何だよ、その目」
「何かもっと凄いのを期待してたよ」
「ホイキ凄いだろ?ゴミを掃けるんだぞ、凄いだろ」
「はいはい、もー出来ないなら出来ないって言えばいいのに」


出来るのに、と風丸君は頬をふくらましていじける。
これも付き合って気付いた事だけど、風丸君はすぐいじけるし、結構子供っぽい。
それを見てついつい虐めたくなっちゃう俺は意地悪な性格なのかな?


「あ、じゃあ二人あやとりしようか」
「二人?あー、あれか。昔母さんと一緒にしたな。今出来るかな」
「じゃあ俺からね」


俺の手に絡まれたヒモを風丸君は悩みながらも取って行く。
眉間に凄いシワ寄ってる。そんなに睨まなくてもヒモは動かないよ。


「……で、風丸君」
「なんだよ」
「何であやとりが俺の小指に絡まって、君の小指にも絡まってるのかな?」
「運命の赤い糸だけど」
「あやとりやってたはずなのになぁ」


時々彼はこういう事をしたがる。
俺付き合って一ヶ月の時は赤い薔薇一本を持って夜俺の部屋に来たし、海で追いかけっこしたいとかも言い出す。
可愛いもの好きの母親のせいで彼の家は少女みたいな家らしくて、それの影響だって文句を言ってたけど彼も満更じゃなさそうで。


「運命の赤い糸……ねぇ」
「俺とヒロトは切っても切れない縁って事」
「ずっと一緒って言いたいんでしょ?直接言えばいいのに」
「だってこういうのロマンチックだろ?」


……俺もこういうの好きだよ、ってのは彼には言ってやらない。
調子に乗るし……ね?



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -