小説 | ナノ


ちゃっかり同じ学校に通ってる二人










無駄に長い校長の話を体育館で聞いて、その後教室に戻ってその後も長期休みに入るという事で担任の諸注意という長い話を聞いて俺達は夏休みに入る。

だけれども。


「何で俺とヒロトだけ居残って掃除なんだよ……」
「そりゃ学級委員長だからね」
「それって担任が勝手に決めた事じゃんか」
「文句言わないの!」


風丸君はへいへい、と適当に返事をして雑巾を絞って窓を文句を言いながらも丁寧に拭いていく。
彼几帳面っていうか、凄い綺麗好きだからやるって言ったら徹底的だもんなぁ。
しかし残るは窓だけ、俺は床担当だけど一通り終わっちゃったし……。


「あ、そうだ」


片付けたほうきを再び持ってきて風丸君から少し離れた所に立って俺は構える。


「風丸君」
「んだよ、俺に窓任せ……は?」


動かしていた手を止めてこっちを見た風丸君はぽかん、と口を開けて棒立ち。
別に何処もおかしくないでしょ。俺がほうきをバット代わりにして構えてるなんて。


「ほら!普通に掃除しても楽しくないでしょ。だから、ほら、その雑巾を丸めて、ね!」
「ね!じゃないだろ。掃除しなきゃ終わらないじゃんか」
「でもさー、夏休み前の思い出作りたいじゃない」
「意味分からん」


なんなのさ、やる前は文句言ってたのに今じゃ逆転状態。
いいさ、いいさ。風丸君め、俺の事を馬鹿にして。
俺はテレビで活躍している野球選手の打つ真似をしてほうきをゆらゆらと揺らして風丸君を威嚇する。


「んー……3番セカンド、基山ヒロト。背番号18ー」
「……18って背番号ってさ、大体投手じゃないか?」
「えっ!?……だ、だって俺のユニフォーム18だったから……」
「……やるならしっかりな」


ため息をついた風丸君は雑巾を丸めて近くにあったガムテープでがっちがちに固め始めた。
おいおい風丸君結構本格的じゃないか。
丸めた雑巾ボールを楽しそうに上に投げてはキャッチして


「実は俺さ、陸上部か野球部か迷っててさー」
「そうだったの?最初サッカー部じゃなかったんだ」
「そうそう、最初俺陸上部だったんだよ。でも野球も好きでさー、幼稚園の時俺は高校卒業後ドラフト一位でどっかの球団に入ってって色々考えてたんだけど」
「ふふ、人生何があるか分からないね」
「俺サッカーやるなんて思わなかった」


よし、と風丸君は雑巾ボールを握りしめて俺の方を向く。
お、来るな。


「ヒロト、真剣勝負だ」
「うん、そっちの黒板に直撃だからね」
「どうだかな!」


風丸君は思いっきり踏み込んで思いっきりこっちに投げてきた。
ちょっとホントに本気じゃないか!
俺は振らなきゃ当たらないと思い、振ろうと思ったら、ガッチガチに固めたはずの雑巾ボールのガムテーブが雑巾に含まれていた水のせいで剥がれてへにゃへにゃな速度のままこっちに飛んで……


「あれ?」


ひゅっと急に進路が変わって廊下側の窓に出て行き……
べちゃあっ、と人に当たる音がした。


「……風丸君……やばいよ」
「まさか人にあたった……?」


そのまさかのまさか。
しかもその当たった人がやばい。やばいよ、俺達殺されるかもしれない。
これ逃げた方がいいんじゃ……。


「おい、ヒロト。お前人様に当てて逃げようとしてるだろ」
「や、やだなぁ、当てたのは俺じゃないよ、風丸君だもん」
「お、おい!ヒロト俺を売るなよ!……そ、その声って」


風丸君も気付いたみたいで顔面が髪の色みたいに真っ青になる。
こ、これは逃げた方がいい、と思って一歩足を踏み出した瞬間襟首を捕まれる俺。


「う、うわああああ!か、風丸君助けてえええええ!」
「ごめん、俺八神に殺される」
「玲名ぁ……」
「どうしたヒロト、そんなに怯えて」
「ゆ、許してくれる?」


俺はおそるおそる玲名の方を振り向くと、玲名は邪悪、ホント邪悪な笑みを浮かべて俺に向かって首をかしげて、顔にへばり付いた雑巾を無理矢理剥がして


「許すか、馬鹿者!」


た、確かに思い出は思い出だけどこんな思い出って……


「か、風丸君ー!!」




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