小説 | ナノ






年越しソバを食べて、一緒にテレビ見て、11時59分になるとテレビの音量を小さくしてカウントダウンとをする。
今年も一緒に年越しだね、なんてココロの隅っこで思いながら俺達はお互いに


「あけましておめでとう」


って言い合うの。
今年で何回目かな、二人で年を越すのは。そうだなぁ、大体10回目、かな。
二人で今年も楽しい一年になるといいね、なんて話して。


「今年は何処に行こうか。俺海行きたいな」
「去年はプールだったもんね。そうだ、海の近くに旅行に行こう!」


じゃあ夏のこの日に予定を入れて、1週間くらい居たいね。
あ、でもその時会社はどうしよう。んー……緑川に任せておけば大丈夫かな。


「後ね、俺夏の服が欲しいな」
「そういえばちょっと服去年小さかったな」


じゃあ服も買いに行って……なんて喋ってるとなんだかウトウトしてきた。
そういえば去年もギリギリぐらいまで仕事しててあんまり寝る時間も無かったなぁ。


「ヒロト眠いのか?」
「んー、年越して、それで、何か去年仕事ギリギリまでしてて、とか思ってたら急に眠くなって、きて」
「あー、ここで寝るなよ、ほらベット行くぞ」


俺を引き摺るように風丸君は俺を寝台に運ぶ。
いやさ、もう付き合って10年だよ?普通恋人を寝台に運ぶのってさお姫様だっことか、おんぶとかじゃないのかな。とか色々文句はあるけど眠いからおやすみなさい。











「ヒロト、朝だぞ」
「えー、もう?俺初夢見てない……」
「初夢って明日見るのが初夢だぞ」


何か俺去年もそれ聞いた気がする。
モゾモゾと布団から起き出してリビングへと向かう。
風丸君は寝起きがいいからいつも俺のために朝ご飯やらなんやら作ってくれる。
今日の朝ご飯何かな。昨日はパンだったからご飯かな。


「今日はおせちだぞ」
「あ、お正月だった」
「ほら、新年最初の仕事してこい」
「ん」


俺の新年最初の仕事。それは郵便ポストに年賀状を取りに行く事。
俺と風丸君は年賀状を送るのも貰うのも大好きで毎年この瞬間が大好き。
おお、今年もたくさん来てる!


「風丸君いっぱい来てたよ!」
「じゃあ俺とヒロトって分けて行ってくれるか?」
「任せておいてよ」


俺、風丸君、風丸君、俺と風丸君。おお、これは吹雪君からだ。変わらないなぁ。
それから、風丸君、俺、俺、俺、俺、風丸君、……これお隣さんのだ。後でお届けしとこ。


「ほら、仕分けたよ」
「おお、えらいえらい」
「ホントそれ褒めてる?」
「褒めてるって」


ホントかなぁ。
まぁいっか。とりあえず年賀状年賀状。
さっき吹雪君の見たけど相変わらずだなぁ。あのニートみたいな格好どうにかならないのかな。せっかく男前なのにね。
おお、これはまた懐かしい人から……。
俺この人から来るって思ってなかったから出さないとなぁ。年賀状余ってたっけな。

それから……、あ。


「あけましておめでとうございます。ヒロトにとって幸せな一年になりますように」
「……あけましておめでとうございます。風丸君にとって幸せな一年になるように」
「直接渡せばいいのに」


俺がそう呟くと風丸君は、お前もな、って呟いてその年賀状を大事そうにじーっと眺める。
そう見ないでよ、普通の年賀状と変わらないでしょ。俺と風丸君が今年行った場所と俺達の写真。
風丸君も同じ年賀状なんだから。


「ヒロトの字が書いてある。凄く綺麗」
「……馬鹿」
「俺ヒロトの書く字好きだよ。俺の好きなヒロトの手がペンを持ってそのペンがヒロトの綺麗な字が書かれる。その文字が書かれた年賀状を俺が受け取る。これって幸せだろ」
「そうなの、かな」
「そーなの」


何か上手くまとめられた気がする。
俺の字……ねぇ。そんなに俺の字が好きなら何回でも書くのに。


「俺も風丸君の字っていうか、このクセのある字好きだよ。風丸君ってすぐ分かる」
「母さんにも言われたな、一郎太の字がクセ凄いねって」


このクセのある字で「ヒロト」って書かれてると思うと顔が自然にニヤける。
ちょっと風丸君の気持ち分かるかも。


「ねぇ、今年もさ」
「うん」
「よろしくね」
「ああ、幸せにする」


何それ結婚する前みたいじゃん。
……今結婚してるようなものだけどさ。


「幸せにしてください」





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