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「風丸君」
「ん?」



干しておいた布団を全て部屋に取り込んでベランダで一息ついてるとヒロトがひょいっと顔を覗かせてくる。
ふふ、と笑いながら俺の横に来てマグカップらしきものを持っている。


「お疲れ様って事で作ってきたんだよ」
「コーヒー?」
「違う、今日はココアだよ」


柔らかい湯気がゆらゆらと揺れて俺はそのマグカップを受け取る。
このココアも必要以上に甘くしたんだろうな。ヒロトは甘党だし。
この前のコーヒーもびっくりした。舌が溶けかけたし、お菓子も甘いしで、ヒロトは砂糖の化身なんじゃないかと思ったほどだ。



「甘い?」
「……ちょっと苦くしたよ。風丸君専用だから」
「そりゃどうも」


んー……この前に比べれば、甘くは、ない、か、な?甘いけど。
ココアを啜りながらボーっと漆黒な空を眺めているとその中で光り輝く星達が見える。
ヒロトはすっとその中の一つの星を指差して


「あれ、俺の故郷」



なんていうもんだから俺は思わず吹き出した。
何で笑うの、ってヒロトは怒るけどそれは設定じゃなかったっけ?
エイリア学園という学校名を名乗って、星の使徒で、宇宙人で、何とかかんとかっていう設定だろ?
吉良星二郎の日本侵略の駒となって俺たちと戦い続けてたっていう。
でも本当はお日さま園という孤児園の子供たちだったっていう。


「だっただろ?」
「他の子はそうだけど俺はホントに宇宙人なんだよ」
「……冗談よせよ」
「冗談じゃないって、実は明日迎えが来るんだよ」



俺は思わずヒロトをぎゅっと抱きしめた。
夜の冷たさとかじゃなくて本当に冷たかった。人ってこんな冷たくなるのかなって思うほど。


「痛いよ?」
「離したらヒロト行っちゃうだろ?」
「どーだろうね」


ふふ、ってヒロトはまた笑って誤魔化す。
ヒロトはその手を俺の背中に回して俺と同じくぎゅっと握る。あー痛い。ヒロトもやっぱ男なんだなって再確認。


「今日一緒に寝るぞ」
「いつも一緒に寝てるじゃない」
「違う、一緒に寝て一緒に起きるんだよ」
「……そうだね」


その日はなかなか眠れなかったけど、やっぱり疲れたのか気付いたら寝てしまっていた。
起きた時ボーっとして頭が覚醒してなかったけど醒めるとヒロトの事が気になってバッとヒロトのほうを見ると赤い髪の毛が俺の胸の中で揺れていた。
よかった、居なくなってないじゃないか。


「ヒロト、ヒロト」
「……ん?」
「ほら、居なくなるなんて嘘じゃないか」
「嘘?ホントにそう思ってる?」
「……え?」





だって今日から俺は基山ヒロトじゃなくて吉良ヒロトなんだから










*おい、PVどうしたんだ

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