小説 | ナノ


風丸君が暴力ふってます














ああ、ほら見てそこに居るヒロト。吹雪と一緒に喋ってるの見えるだろ?
あ、ヒロトが笑った。ホントヒロトは笑うと可愛いな。

ヒロトは昨日俺が殴った所気にしてるみたいだ。
そりゃちょっと痛めつけたけど、そんなに気にする程じゃないだろ。
むしろ真っ白な肌に傷が映えていいっていうか、似合ってると俺は思うんだがなぁ。

包帯を巻いて隠すって方法もあるけど、今回の場所は肘のちょっと上らへんだからな。少し派手に動いたら見えちゃうね、ってヒロトが。
別に俺だってそんなすぐ殴る奴じゃないよ。ただヒロトが無神経っていうか、鈍感すぎるから痛めつけちゃうっていうのかな。好きだからこそやってしまう行為なんだろうな。


吹雪は別に大丈夫だろうと俺は信じてる。
吹雪には意中の相手もちゃんと居るし。ヒロトとは友人として付き合っているのが分かる。


「ヒロト」
「あ、円堂君……」


また、か。
何回言っても気付かない。
スキンシップが激しいんだよ。喋りかける前は絶対肩を触って喋り終わっても肩を触って去っていく。
キーパー練習する時は絶対ヒロト誘うし。豪炎寺誘えばいいのにな。


「ヒロト一緒に練習しないか?」
「あ、あ、のね。今日はちょっと……」
「体調悪いのか?」
「そうじゃなくて、今そんな気分じゃないっていうか」
「そっか、なら練習したかったらいつでも呼べよな!」
「うん、ごめんね」


そんなやりとりをしてヒロトから円堂は離れていく。
今回はちゃんと断ったみたいでよかった。
前回は流れ流され一緒に練習してたみたいだけど。
俺だって別に誰と一緒に練習してようが文句は言わないけど、円堂とは嫌だ。
円堂は俺の幼なじみだ。近くでずっと見てきたんだ。
友達に恵まれ、サッカーにも恵まれて。
俺はサッカーに陸上に中途半端。だけど俺にも好きな人が出来たんだ。
そのヒロトを奪われてしまったら、と考えたらゾッとするんだ。


どうすればヒロトを取られないですむんだろうな



――あ、そうだ





「風丸君どうかしたの?」


練習が終わってから俺はヒロトを呼び出した。
練習が終わったヒロトの格好は半袖半ズボンだ。足のアザが目立ってて似合うな、ってつい話の内容を忘れて眺めてしまう。
とりあえず座れよ、と俺はヒロトをベットに座らせる。


「あのな、俺はいっぱい考えたんだよ」
「……うん」
「ヒロトがどうしたら俺だけのものになるかな、とか。ヒロトを誰にも見せたくない、とか。その傷だって誰にも見せたくないんだよ」
「……そう」


まぁ傷付けたのは俺なんだけど。それを見せたくないてのもおかしい話だ。


「ヒロトって何で俺に殴られても平気なんだ?」
「風丸君ならいいかな、って。そりゃ俺も痛いのは嫌だけど」
「ふぅん」


ヒロト殴られるの嫌かと思ってたけど別にそうでもないんだ。
だったら、「あの事」を言ってみても大丈夫だよな。


「それで俺思ったんだ。ヒロトを俺だけのものにする方法」
「風丸君、そんな事しなくても俺は」
「それで、殺してもいい?」
「……は?」


殺してもいい、と言った瞬間ヒロトの顔が強ばってる。
これが一番いい方法だと思うんだよな。


「ヒロトは俺の事好きなんだろ?殴られるのも大丈夫なんだろ?だったら死ぬのも大丈夫だろ?」
「風丸君……それおかしいよ」


おかしい?おかしいって何が。
俺は普通だろ?だた好きな人にどのくらい好きかって伝えてるだけなのに。


「なあ、ヒロト。俺に殺されろよ」





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