小説 | ナノ







俺とヒロトはFFIの時に付き合っていた。今も付き合ってるけど、なんて言うんだろう、付き合い始めたのかな?そう、付き合い始めたんだ。
FFIが終わってライオコット島から日本へ戻った時、ヒロトはエイリア騒動の後片付けをしなくてはならないらしく俺とはあまり会えないかもしれないって言った。


「でも俺なるべく会いに行けるように頑張るね、これ携帯のアドレス」
「ああ、俺も会いに行く」


お互い何処に住んでるのかも分からなかったくせに会いに行くなんて言っちゃって。
その時貰ったアドレスは今も大事にしまってある。1回も使わなかったけど。
何でだろうな、凄く会いたかったのに。

一度戸惑うとずっとメール出来なくて引き摺って引き摺って気付いたら10年だ。
時々吹雪が染岡にこっちまで来る時があった。
吹雪とヒロトは仲が良くてメールのやりとりをするらしい。その時に俺はヒロトの様子とか聞いたけど元気に生きているみたいだ。
それなのに俺はメールが出来なかった。

でも、最後にヒロトが


「会えなくてもお互いサッカーを続けようね。そしたら約束をしなくても会えるかもしれないし」
「うん、俺もサッカーをするとヒロトの事思い出すし好きだしずっと続けるよ」


そう言って俺はこの10年ずっとサッカーを続けてきた。
高校に入学してサッカー部に入って、高校卒業してプロからスカウトが来たけど俺はなぜかその誘いを蹴ってしまった。
別に俺がサッカーを始めたのはプロになりたかったわけじゃないし、円堂のあの熱い気持ちに乗った、からなのだろうか。
でもプロもいいなってのも少し思ったけど、俺はなぜかプロサッカー選手というのに惹かれなかった。訳が分からないな。

そして今日、10年ぶりにイナズマジャパンのメンバーで集まる事になった。
10年経って1回も連絡とか取らなかったけど俺とヒロトってまだ付き合ってるのかな?
俺は付き合ってるって思ってるさ。だって好きだし別れ話もしてないからな。


「風丸君、こっちだよー!」


やっぱり大人になると集まるのは居酒屋。
俺が店の中に入ると吹雪がすでに出来上がってる状態だった。
俺は吹雪の隣か。……ヒロトはまだ来てないみたいだ。


「風丸君変わってなーい、何かイギリスだっけ?そこに居たエドガー君にそっくりになっちゃったね」
「髪伸ばしっぱなしにしてたからなー。俺でもそう思う、親戚かとよく間違われるな」
「ふふ、何か紳士みたい」
「そういう吹雪は何かヒモ男みたいだけどな」


俺がそう言うと吹雪は急にショックを受けた顔をして、さっき染岡君にも言われた、って呟いてまた酒を口に運んでいく。

結構みんな変わっていないみたいだ。……不動もヒモっぽいな。
俺もとりあえず何か摘みながら酒でも飲もうかなぁ。


「ご、ごめん遅れちゃった!」
「遅いぞーヒロトー」


時が止まった気が、した。
後ろで円堂が騒いでる。う、後ろにヒロトが居るんだよな。


「ヒロトくーん!風丸君一個席ずれてー、僕ヒロト君の隣がいい!」
「あ、ああ」


ぎくしゃくと席をずれると俺がさっきまで居た場所にヒロトが座った。
やばい、凄い格好よくなってる。眼鏡までしちゃってるし、何か髪の毛とか凄いし、何が凄いって凄いんだよ。服装も落ち着いてるっていうか。


「風丸君久しぶり、元気にしてた?」
「あ、あ、うん。元気。ヒロト格好良くなったな……」
「なにそれ、一番最初がそれって」


10年前と変わらない笑顔を浮かべて笑うヒロト。
何にも変わってない。





結局吹雪がずっとヒロトを離さなくて俺はヒロトと何にも話せなかった。ちぇー……。
でも店を出る時にヒロトは俺に小声で耳打ちをしてくれた。
後で抜けだそうって。
この後はどうやらカラオケらしく円堂を先頭にほどんどの人がカラオケに行ってしまった。
店の前には俺とヒロトだけ。ていうか風冷たいなー。


「とりあえず公園行こうか」
「ここじゃなんだしな」


もう真っ暗で何も見えない公園に行く。明かりが一個あるだけの公園。
そういえばここの公園で小さい頃よく円堂とサッカーしてたなぁ。中学に上がったらしなくなったけど。俺は一年の頃陸上に専念してたからなぁ。


「あ、サッカーボールだ」
「ホントだね、誰かの忘れ物かな?」
「……ヒロト、サッカーする?」
「……うん、いいよ」


久しぶりだな、ヒロトとサッカーなんて。
ボールを蹴ってみるとあの時の事を思い出す。
ヒロトと約束をしてから俺はがむしゃらにサッカーを続けたあの時を。
ヒロトもきっとサッカー頑張ってる。そう思いながら俺はサッカーをずっと続けたんだ。


「俺ずっとサッカー頑張ってた、ヒロトも頑張ってるって思ったら俺も頑張れたんだ」
「そ、っか」


ぽんとヘディングをしてヒロトにパスをする。
ヒロトはそのボールを手で拾う。あれ、何で蹴り返さないんだろう。


「風丸君頑張ってたんだね、ごめんね」
「何で謝るんだよ」


ヒロトは俺にボールをコロコロと投げながら返す。
……もしかして、いや、そんなわけはないよな。


「ヒロト、お前まさか」
「……」


ヒロトの足下にちゃんと狙ってボールを蹴るとヒロトは長年のカンか思わず蹴り返そうとするがスカッと空振りをしてしまった。
……眼鏡ってそういう事かよ。


「ヒロトお前目ぇ見えてないのかよ……」
「ごめんね……高校入学してサッカー部入って少し経った時かな、多分FFIに出場が相手は嫌だったんだね、いじめにあって目を殴られちゃった」
「何で言わなかったんだよ!言ってくれたら……ッ」
「……言えないよ、言えなかったんだよ、何で辛い時に風丸君が側に居ないのって何回も思ったよ!」


俺がいじいじしてメール出来なかった十年間ヒロトはずっと辛かったのか?
辛くても辛くても辛いって俺に伝えられずに10年も。
サッカーを続けてれば会えるって言っても目が見えなきゃサッカー出来ないじゃないか。


「俺のバカ野郎……ッ」






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