おひさま園に、ショタ(5歳くらい)基山南雲達仲良く住んでいます
最悪だ、やっちゃった。
まさか晴矢があんなに怒るなんて思わなかった。
事の発端はついさっきのお昼くらいだったかなぁ。
お昼ご飯食べた後は園のお庭でサッカーが毎日の日課で今日もそのサッカーをしていた。
そこまでは良かったんだよ、でも……
サッカーしてる時に父さんがやってきたんだ。
おひさま園のみんなは父さんが大好き、それは絶対。
それでみんないい所を見せたがるわけで、僕もその一人で父さんにいい所を見せて褒めて貰おうと一生懸命にボールを追いかけた。
園のお庭でサッカーって言っても結構本格的で11対11の本格的なサッカー。
父さんが最近サッカーゴールを二つ買ってくれて。
でも時間は20分くらいだったかな?それで、結果は僕達の圧勝だった。
玲名ちゃんが凄く張り切ってたからなぁ。
玲名ちゃんは父さんに凄く褒めて貰ってて僕も褒めて貰えた。
でも、この父さんの愛情は僕に向けてじゃないのは知ってる、僕じゃないヒロト。父さんの本当の息子の吉良ヒロトって子だ。小さい頃死んじゃったんだって。
だからその子の代わりなの、僕は。
必要以上に可愛がられる僕を見て晴矢は怒っちゃったみたい。
縁側で足をぶらぶらと投げ出して下を向いていたらふと陰が指した。
誰だろう、僕の前に居るの。そう思いながら顔をふっと上げると中学生か高校生か分からないけどそれくらいのお兄さんが立っていた。
真っ赤な髪の毛にグレーの着物を身にまとって。……なんか見た事あるような。
「基山君?」
「そうだけど……お兄さんだあれ?」
「俺?俺は……そうだなぁ、君のお父さんの知り合いかな?」
そうだなぁ、って明らか今考えたじゃないか。
怪しいなぁ、僕の名前も知ってるし。
「まぁまぁ怪しまないでよ!お父さんのお知り合いって事で許してよ」
「……で、お兄さん何しにきたの?」
「君のお悩み相談……かな?」
お悩みって……なんかもう胡散臭いを通り越して呆れるっていうか。
なんかもういいや、どうでも。
「君、お友達と喧嘩したんだろ?俺が見た限り相手側が一方的に怒ってたって感じだったけど」
「……もうしょうがないの。僕がここに居る限りしょうがないの」
「本当にそう思ってる?君もみんなと同じように扱って欲しいんでしょ?」
「っ……」
僕の事どこまで知ってるんだろう、この人。
でも何だろう、この人に話をしてると楽になるっていうか……。
「ねえお兄さん僕、どうしたらいいのかな」
「そうだなぁ、君たち小さいんだし喧嘩するのは当たり前だと思うんだよね、しない方が逆におかしいかも」
「そうなの……かなぁ、でも晴矢に嫌われたのは変わらないもん」
「ホントにそう思う?でもそれで彼が君の事を嫌ったのなら彼はちょっと駄目な子かもね」
「晴矢を悪く言わないでよ」
僕がぴしゃりと言い放すとお兄さんはふっと笑って僕の髪をくしゃくしゃにする。
朝姉さんがせっかくセットしてくれたのに。
「君が彼を好きなら大丈夫だよ、あ、ほら見てみてよ」
お兄さんが僕を縁側から立たせて背中を押した。
僕が体勢を崩してごろっと地面に転がってしまった。
「ちょっとお兄さん何する、の?」
あれ、居ない?
さっきまでお庭に立っていたお兄さんがすっかり消えてしまっていた。
あれ?さっきまで居たのに。やっぱ危ない人だったのかな。
「お前何やってんの?」
「は、晴矢!」
「大丈夫か?」
僕の手を握って、よいしょ、と俺を立たせてくれた。
あのお兄さん……どこ行ったんだろう。不審者だったら父さんに言った方がいいのかな。
「ヒロト?」
「え、あ、なあに?」
「あの、よ、昼はごめんって思って」
晴矢が僕の所にわざわざ謝りに来てくれるなんて……。
晴矢僕の事嫌いじゃなかったんだね。
嫌いだったら謝らないで気まずいまま済ますもんね。
「ありがとう、晴矢」
「は?何でお前がお礼言うわけ?」
「……わけわかんねー」
「分からなくて良いよ」
後、お兄さんもありがとね。
話してちょっとココロが落ち着いたもん。
でも、あのお兄さんと僕そっくりな顔してたけど、吉良ヒロトってわけじゃないよね。
だって吉良ヒロトはもう居ないんだから。
「ねえ晴矢」
「あー?」
「幽霊って信じる?」
「……俺が幽霊嫌いなの知ってんだろ?」
「うん、知ってる」