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ライオコット島に来て随分経ったなぁーなんて思って窓から夜空を眺める。
もう少しでリトルギガントと試合なんて……あっという間だったよね。
まさかアジア予選の決勝戦相手が晴矢達だったなんて。
そういえば俺が代表選考に呼ばれた時なんか様子がおかしかったし、その時にアフロディ君から呼ばれてたのかな?

でも、あの時の晴矢楽しそうだったなぁ。

「でもあれから……」

一回も会ってないし連絡も無い。
ライオコット島に飛び立つ時くらい空港に見送りくらい来てもいいのにさー、俺寂しかったんだからね。
緑川とはちゃんとちょこちょこ連絡も取ってたりする。
今どんな練習してるの?だとか、俺も頑張ってそっちに行くからとか、こまめに。
風介とも10日に1回くらいのペースで連絡は取ってる。
治は……そういえば最近また連絡が取れなくなっちゃった。姉さん達と一緒に練習してるのかな?

晴矢だよ、問題は!

エイリアが終わってから1回も連絡取ってないし。
一応連絡先知ってるけど、電話には出ないし、メールは返信来ないし。
だからファイアドラゴンの時会えた時凄く嬉しかった。
まずちゃんと生きてたってのが分かったし。あれだけ連絡とれてないんだもん、死んだかもって思っちゃうよね。

……俺達付き合ってるんだよね。
自然消滅しちゃうのかな。俺晴矢の事好きなのに。
晴矢は俺の事好きじゃないのかな?だから連絡も取らないで……。

風介に電話で聞いてみよう。
携帯を取り出して風介の名前を探して通話ボタンを押した。
出るかな?寝てないよね。時差あるけどきっと起きてるよね。風介夜行性だもん。

「もしもし風介?」
「何だヒロトか、何か用か?」
「あのさ……晴矢の事なんだけど」

晴矢と言った瞬間風介が嫌な顔をした気がした。
電話だから顔は見えないけど、小さく舌打ちが聞こえた。喧嘩でもしたのかな?

「あいつなら知らん。お前の方がよく知ってるんじゃないか?」
「言っておくけど俺、晴矢とエイリア終わってから1回も連絡取ってないからね」

いつも一緒に居る風介にちょっとヤキモチを焼いてる。
だって俺に内緒で一緒にカオスなんてチーム作って韓国行って。ずるいよ。

「お前達付き合ってるんじゃなかったのか?」
「……そうだよ、でもどうしてだろうね。やっとエイリアからも解放されたのに……晴矢と小さな頃みたいに普通に喋ったりしたいのに……どうして」
「私に聞くな」

そうだね、風介に当たってもしょうがないよね、そう言って俺は溢れ出しかけた涙を手の甲で拭いた。
でも話を聞いてもらってちょっと落ち着いたかも。

「でも風介と晴矢って今一緒に居るんじゃないの?」
「二日前までな」
「二日前?」
「ああ」

なにそれ、訳が分からない。

「それってどういう……」
「お前に会いに来たからだよ」

時間が止まった気がした。
嘘……だよね。

俺は思わず電話を切って声のした後ろを振り向く。
そこには会いたくても会えなかった、連絡をしたくても出来なかった晴矢がいた。

「ど、うして?」
「さっき言っただろ」

俺に会いに来たって事?
でも――

「今更なんなんだよ!今までなんの連絡もしてこなかったくせに!」

今更……今更だよ!
俺の事もう嫌いで会いたくないのかと思って連絡もしないかと思ってたのに。
もしかして別れを言いに来たのかな。わざわざ、かぁ。

「別れたいの?」
「そうだとしたらわざわざここまで来ねぇよ」
「だったらどうして」

晴矢は俺の元に近づいてきて俺をふわっと抱きしめた。
ずっと触れたかった晴矢が今ここに居るんだと思ったら目頭が熱くなってくる。
どうして今更優しくするの。

「お前の過去を知ったんだ。ファイアドラゴンに入った後に風介から全部」
「俺の過去って……」
「吉良ヒロトの事だよ。俺何も知らなくて……なのにエイリアの時一方的に傷つけて。情けなくって」
「それで連絡取らなかったって事?」

晴矢は、ああ、と頷く。
俺の中での晴矢は強気でポジティブで怒りっぽくて、って思ってた。
でも、本当の晴矢は臆病で人一倍他人の事考えれる人だったんだ。でも、

「それで……それって俺の事同情してたって事?」
「違うだろ。自分自身が情けなくってって事だって。お前最近流星ブレードの調子も悪いだろ?」
「……よく分かったね」
「だから……小さい時みたいに必殺技の練習相手になってやろうと思って来たんだよ」

流星ブレードを止められた時の俺を見ていられなかったらしい。
俺がこんな状態なのにまた晴矢は何もしてやれないのかって。
馬鹿だなぁ、俺は何かしてくれなくても晴矢が側に居るだけで嬉しいのに。

「晴矢」
「ん?」
「ありがとね」

わざわざライオコット島に来るなんて馬鹿だよ。
馬鹿。ホント馬鹿。

「馬鹿」
「知ってる」
「でも好き」
「うん、俺も好き。ごめんな」
「謝らないでよ、馬鹿」
「うん」







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