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「今日から新学期ですが」

体育館で生徒代表の我が校の生徒会長様が立っている。
女子からかなりの人気がある奴らしくて奴が話すたびに黄色い声が上がる。

俺の通っているこの学校では、生徒会選挙というモノがあり、立候補や推薦で生徒会役員を決める推薦された側としてはとても面倒くさいモノがある。
俺は去年危ない事に推薦をされ、ギリギリのところで負けた。確か……秘書だったかな。

今現在の生徒会長様は確かに人気があるってのは分かる。
燃えるように真っ赤な髪に白い肌。……白……と言っていいのか、あれは顔色が悪いのか普段からあれなのかちょっと良く分からないな。
その顔のパーツは全て整っているときた。スッと切れ目な目。碧眼。日本人……なのかな、あいつは。
そんな事を言っている俺も髪の色が日本人っぽくないと言われる。

「なあ、風丸知ってるか?」
「あー?」

生徒会長の話を聞くのが暇になったのか、隣に座っているクラスメイトが話しかけてくる。

「生徒会長いるじゃん、生徒会長さ、女からの支援すげぇじゃん?」
「そりゃな、モテそうな顔してるしな」
「それが女だけじゃなくて男にもモテるらしいぜ!」

こんな噂もあったりするほど奴はモテモテらしい。
しかし噂によれば奴は自分はモテると周りに自慢するわけでもなく周りをバカにするような態度もしないとても良い子らしい。
そんな生徒会長様と俺は接点ない訳で……と思われるが実はそうではない。
実は放課後に図書室で会うのだ。

会うと言っても俺の完全な一方通行だ。
ただ、一年生の時にふらりと向かった図書室に奴が居た。
あの時初めてあいつを見た時に一目惚れというものをしてしまって俺はその日から毎日図書室に通いあいつを遠くから眺めているという訳だ。
我ながら乙女な行動だと笑ってしまいそうだが、相手が男なわけだからそりゃそうなるよなーなんて一人で納得して。

今日の放課後も図書室に行く。
別に読む本なんて無いけど、ただあいつから長机3つ分離れた所で本を読んでるふりをしてチラチラ見るだけなのだが。
……なんか言っててあれだけど、俺って凄く気持ち悪い奴なんじゃないか?

「……あ、居た」

俺も早く来たと思ったのだが奴は俺よりも早く来て、本を片手に何か勉強しているみたいだ。
それを俺は確認すると、いつものように席に座るはずだった。

「ねえ、風丸一郎太君」
「……え?」

ふいに奴に話しかけられて返事をするのに数秒もかかってしまった。
それほど急だった。あいつから話しかけられるなんて思いもしなかったんだから。
それ以上にビックリしたのがあいつが俺の名前を知っているという事だ。

「聞いてるの?」
「え、あ、き、聞いてるけ……ど」

いざ憧れの生徒会長様に話しかけられるとこんなにどもってしまうものなのか。
俺は戸惑いを隠せずに奴の前でオドオドしてしまっている。

「君いつもここに居るでしょ?」
「あ、ああ」
「図書室に何か気になるモノでもあるの?」

あなたです、なんて言えない。
俺は曖昧に、まあ、色々だよ、なんて返す。
あー俺可愛くない。せっかく夢のような事が目の前で起こっているのにこんな、え?生徒会長と話?えー別に普通だったけど、みたいな反応をしてしまっている。
本当なら、うわあああああマジで!?あの生徒会長と!?という反応をしてもいいのに。

「ふぅん、ねえ風丸君。君って歴史得意でしょ」
「そりゃまぁ、他の教科よりはちょっと出来るかな」
「嘘言って、ちょっととか言っていつも社会はぶっちり一位のくせに」
「何で知って……」

たくさんの生徒がいる、それにテストの成績なんて知っているんだ。
俺なんて張り出された結果とか自分の順位を確認したらすぐおさらばするのに、こいつは覚えている。

「そりゃ……君の事気になるからね」
「俺が?」
「うん、俺君の事好きだもん」

――え?
話かけられた時よりビックリした。
俺の事が……好き?ちょっと待てよ。
俺本当に夢でも見てるんじゃないか?今日の始業式の挨拶の時にうっかり寝てしまって今も寝ているんだ。そうに違いない。
試しに顔を殴ってみると……痛い。夢じゃないのかよ。

「何やってるの」
「いや、夢かと思って……」
「そうだろうね、俺も今ここで君と話してる事も夢じゃないかと疑ってるもん」
「と……言うと?」

詳しく奴の話を聞くともっと驚いた。
奴は俺の事が一年生の時から好きだったらしい。俺と初めてここで会った時に一目惚れをしたらしくて。
それで俺が推薦で生徒会役員秘書すると聞いた時にあいつは喋りたいな、と思って生徒会長に立候補。しかし俺が落選。
それで今日決意して俺に告白――今に至るという。

「あー……」
「気持ち悪い……?」
「そうじゃなくて……俺と同じすぎて」

図書室で初めて会った時に一目惚れで今に至るって俺と同じすぎるだろう。
立候補やら推薦の所は違ったが。落選した時にあいつが生徒会長に立候補って話し聞いたし。

「え、じゃあ風丸君……」
「俺もお前の事好きなんだよ」






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