長編の8月の中旬らへんの話(長編読んでなくてもおk……なはず
一緒に住んでます
「あつ……」
部屋の中で風丸君が呟く。
口を開けば暑いの一言。他は……あーとか、うぇーとかかな。とりあえず暑くてたまらないのだ。
俺ももちろん暑い。少しでも涼しくなろうって思ってタンクトップに短パンという格好で居るんだけれども、この格好では無意味らしい。ものすごく暑い。
背中に汗は流れるし気持ち悪くて仕方がない。
家の近くにプールなんて娯楽施設もないし、コンビニも凄く離れてるし、……言っちゃ悪いが本当に何も無いのだ。
少しくらい何かあってもいいのにね。
俺たちは先ほどからずっと氷枕を作ったりビニール袋に氷を入れておでこに乗せたり冷えピタを体中に貼り付けたりしている。やらないよりマシかなって。
でも温くなった冷えピタはものすごく気持ち悪い。温く溶けきれなかったチーズみたいな感触。
「何か涼しい事したいね……」
「……あ、そういえば、うちわがあったかな」
風丸君が転がる俺をひょいっとかわして引き出しをがさがさとあさる。
そういえば風丸君の家の収納のスペースって引き出し以外見たことないんだけど。いったいどうなってるんだ。
「あ、った!しかも2個だぞ!」
「やった!1個貸して!」
ほらよ、と風丸君は俺にうちわを渡してくれた。
パタパタと仰ぐとほのかに涼しい。あー……何もないよりはマシかな。
にしてもうちわの柄がナスって……風丸君のうちわはキュウリだ。風丸君のセンスが俺にはちょっと理解出来ないなあ。
「……手疲れてくるな」
「……うん、ねえ、扇風機とかないの?」
「あ、あるわ」
ええええ、何で気づかないの!?って言うと風丸君は暑さで壊れたのか、高らかに笑ってリビングから出て行った。
ああ、一応リビング以外の引き出し以外にも収納スペースはあるんだ。
「ほら、これだ」
「おお!電源電源!」
俺がせかすと風丸君は焦るな焦るな、と言いながらコンセントを差し込み電源を入れた。
手動では無く自動で風が俺の肌に当たる。あー気持ちいい。
「もっと早く気づけばよかったな」
「ホント」
風丸君は強さを中にして扇風機の首を回した。
俺と風丸君は並んで前屈みになって扇風機と一緒に体を動かす。
あ、そうだ。
「ねえ、風丸君。小さい頃とかさ、よく、あーって扇風機に向かってやったよね」
「ああ、やったやった」
「……あー我々は、遠き星エイリアよりこの星に舞い降りた、星の使徒であるー」
「おい」
「やだな、冗談だよ」