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俺より大きくて優しい背中が大好きで無性に抱きつきたくなって、抱きつくと、いつもあとべは



「どうしたジロー？」



なんて、優しく俺に話しかけてくれる。嬉しくなって後ろから強く抱きしめると「しょうがねぇやつだな」って言って俺の頭をわしゃわしゃと撫でてくれるんだ。


あとべの手、俺大好き。氷帝の女子達は、あとべっぽくなくて好きじゃないって言うけど、俺はあとべの豆だらけの手大好きだよ？
見えないところであとべは努力してて、でもそれを隠したがってるみたい。前に聞いたんだ、あとべに。
そしたらさ、



「隠してぇから隠してるんだよ」



って、何かはぐらかされた気がする。
でも二年生の時に、俺あとべの豆だらけの手に撫でられるの超好き、って言ったら少し恥ずかしそうに、そうかよって笑って撫でてくれた。




あとべとトモダチになったのも俺が一番最初なんだよ？
あとべってば入学初日にテニス部乗っ取っちゃったでしょ？それで周りからの印象は最悪で。特に亮ちゃんにがっくんとよく喧嘩してたなぁ。でも後々考えると、あれは喧嘩っていうよりも二人が一方的に怒ってたっていうのかな。でもあとべ楽しそうだった。

周りもきっとどう接して良いか分からなかったんだと思う。
あとべも今までトモダチと呼べるトモダチも居なかったみたいだし、結構悩んでたみたい。
俺はあとべの事最初から大好きだったよ。面白い奴が来たなぁって。

俺もテニス強いけど、あとべはもっと強い。試合してみてーって思ってたんだけど、……みんなあとべの指示無視しちゃうから部活とか最初の方まともに出来なかったんだよね。
三年間部活やってたのに（ほぼ寝てたけど）あとべと１回ぐらいしか試合した事ねぇもん。
でも、練習試合で勝つとあとべは、「よくやったな」って優しく撫でてくれた。



特別だと思ってた。
あとべに、こうやって抱きつくこと、撫でられること、他にも俺の大好きなお菓子をわざわざスーパーとかコンビニで買ってくれること、俺のこと起こしてくれることとか、全部全部。
俺にとってあとべは特別な存在なんだって思ってる。だからあとべも俺だから全部許してくれたり、いろいろしてくれたんだって思ってた。
でもあとべにとって俺は特別じゃなかったのかな。俺が大好きな背中も、手も髪も瞳も優しさも、あとべも全部あいつにとられちゃった。



あとべの事大好きって気持ちは俺だけのものなのに、それもあいつにとられた気がして悔しくなった。
あとべ大好きって叫びたかったのに口の中で気持ちが弾けた気がした。

2013/01/29 16:39