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「ミラ、かわいい!」

「ぴったりだな。よかった」

「流石ペンギン、器用だな」


 第一声は三者三様。三つの視線をいたく浴びる注目の的はミラだ。正確に言えば、彼女の服装ということになるのだろうか。今の今までは女物のシャツとショートパンツで暮らしていた彼女だが、その身なりは白いつなぎへと一変していた。靴も他のクルーと同じ、黒いブーツである。胸元に刻まれたジョリーロジャーが、不敵に笑っている。当人のミラは、くるくると回って背面までを三人に見せるくらいには、無邪気にはしゃいでいた。


「え、流石ってどういうこと? ペンギンが作ったの?」

「ああ。何せミラのサイズに合うのはなくてな。この間の島でブーツと白い布を買っておいたんだ」

「ペンギン、お母さんみてェ」


 爆笑するシャチを彼が睨む。あながち彼の言葉も間違ってはいまい、彼の手先が器用なのは真実である。ただの布きれ一枚を服にしたてるのは、普通の男がそう簡単にできることではない。


「ミラ。これでお前も正真正銘"ハートの海賊団"の一員だ」


 シャチに対して喋るときとは打って変わって、ペンギンはとても優しく告げる。クルーお揃いのつなぎは、ハートの海賊団のユニフォームだ。それに身を包むことは則ち、ローの掲げるジョリーロジャーに命を賭けることと同義である。それ故に、つなぎを着ている者は、どんなに気が合わずとも神命をともにする仲間となる。仲間への裏切り、背信行為も、けして許されたものではない。


「帽子は、ユニフォームではないのですか?」

「帽子? ああ、違う違う。結成が北の海だったから、大半は癖でつけてるだけだよ」

「そうですか……。私も、何かかぶろうかな……」


 天井を見上げ思案するミラは、クルーと同じ服装になったせいで、余計にその華奢さが目立つ。戦闘になったら隠れさせないといけないだろうなと、ペンギンは思った。それは彼女のためにも、また戦闘するクルーや船長のためにも。「え、ミラ帽子かぶんの?」とシャチが残念そうに問うので、ミラは首を傾げた。


「なんか勿体ねェな。ミラ髪キレイなんだし、被んなくていいと思うけど」


 さらさらと髪の間に指を通して、シャチは何気無しに呟いた。瞬時にミラの顔が赤くなったのは、誰がどう見ても気のせいではないのだろう。「わ、私今日、まだ、寝癖直してなくて」となぜか行き所の分からない言い訳をする彼女に、シャチが「女子か」とツッコむのだが、ペンギンとしてはむしろそのツッコミにツッコみたいところである。いや女子だろ。しばらくして平常の顔色を取り戻した彼女は、「あの、ひとつ気になっていたんですが」と話題を逸らす。


「ローさんはもふもふしたものが好きなんですか?」

「俺が聞きたい!」


 堪えきれずに爆笑するシャチとペンギンが、すぐそこで話を聞いていたローにバラされるまで、あと数秒。


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