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小さな足音が廊下からこちらに近づいてくるのを、彼は文机に向かいながら聞いていた。
「…見つかったな」
ぽつりと呟いたとき、襖が開けられる。
「せっちゃん、みーこ知らない?」
外は寒いのだろう、頬をりんごのように赤くしたまちが言った。
「…あー、やっぱりここにいたのね!」
せっちゃんの横に丸くなっていた年寄り猫のみーこは、心なしかうっとおしそうに顔を背ける。
「みーこ、まちとあそぼ!」
お構いなしに持ち上げようとするまちから逃れようと、せっちゃんの後ろに隠れてしまった。
「せっちゃんずるい!」
むーっと頬を膨らませたまちは、みーこを捕まえようと文机に向かっていたせっちゃんの膝に飛び込んだ。
「ああこら、まち!」
紙からペンを離したに彼は溜め息をつく。
「だって一緒に遊んでくれるひといないんだもん」
りんご色のふくれっ面がなんだかおかしくて、彼は途中だった原稿の手を止めた。
「しょうがないなぁ」
本当は、今日は書き物をすると決めたのだけれど。
そのためにまちには、遊んでやれないと言っておいたのだけれど。
「なにして遊ぼうか」
「…あそんでくれるの?」仕方なしに頷くと、幼い笑顔に絆されたせっちゃんは書きかけの原稿用紙もそのままに、手を引かれて離れの自室を後にした。

丸くなっていたみーこは、耳をぴんと立てて片目をひらく。
そして襖が閉まるのを見ると、何事もなかったように再び眠りについた。


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