皆さん、どうも、こんにちは。今日はわたしのモーニングルーティンを紹介したいと思います。
 七時二十五分、起床。体のほとんどが掛け布団から外れているので、ひんやりした朝の空気に身震いし、強制的に目が覚めます。頭の中は依然として、薄い膜を張ったような鈍重な感覚に覆われています。いつもと変わらない部屋の風景をぼうっと眺めたあと、ようやく重たい腰を折り曲げました。布団の中へ行方を眩ませたブラジャーとショーツを探すことから、わたしの一日は始まります。
 七時三十分、ベットから脱出。シーツの上で丸まっていた布切れをふたつ装備しました。となりの男の体を跨ぎ、狭苦しいベットから抜け出します。朝の無意味な決まり事のようにチュンチュンと鳴くスズメの声が、閉じこもった部屋の外から聞こえてきました。床に散らばる衣服を避け、洗面台に向かいます。
 八時二十分、もうひとりが起床。すでにわたしは朝の支度を済ませ、半熟のベーコンエッグとマーガリンを塗ったトーストを摂り終えました。熱々のドリップコーヒーを一杯、舐めるようにすすっていたところで、ベットの膨らみが動きます。起き抜けのたるんだ顔をした男と目が合いました……。
「……いま何時?」
「八時二十分」
「んー……」
「今日大学は?」
「二限から。ていうか、何だそれ」
 それ、と指差された先にあるのは、わたしの手の中のGoProだ。
「モーニングルーティンだよ。記録してるの」
「ふうん。何で?」
「退屈しのぎ」
 太刀川はへえと、納得してるのか分からない声音で相槌を打った。彼にとってもわたしにとっても、それはあまり重要では無いやり取りだった。
 厚みのある肌色の体躯がベットの上で起き上がる。太刀川は寝ぼけた目つきのまま、昨夜脱ぎ捨てた自分のTシャツを探していた。無尽蔵に衣服が散らばったベットの周りは、空き巣に入られた現場のようだ。
「わたし一限からだから先出るね。カギ置いておくから、出る時家のポストの中に入れといて」
「おー」
 散々使われた定型文句の如く決められた言伝を、太刀川は聞き流した。床に落とされていたスマートフォンを手の先で捕まえて、再びベットの中に沈んでいく。まだ微睡みから覚めるには早いらしい。ベランダの、僅かに開かれた厚手のカーテンの隙間から、冷たく澄んだ秋の光が差し込み、熊のように寝転がる男の膨らみを白く照らしていた。
 リビングに掛けられた電波時計を見上げる。長針はこの家を発つべき時刻にさしかかろうとしていた。手にしていたGoProの電源を落とし、ダイニングテーブルの上に置く。ハンガーラックから薄手のトレンチコートを取り出して、硬いローファーの履き口を足に馴染ませれば、何の面白みもない、わたしのモーニングルーティンは呆気なく終わる。
 終わりだ。そう。こんなの撮ったって、在り来りすぎて、誰の退屈しのぎにもならないのである。

 退屈だ退屈だと言うけれど、わたしは日々の生活に強い不満を持っている訳では無い。
 健康的な家族や友人らと良好な関係を続けられているし、大学やボーダーの時間以外にも自由に遊べる精神的な余裕もある。彼氏とのセックス頻度だって不満は無い。順風ばかりでは無いが、一般的な日本人が享受できる、ありふれた幸福をきちんと掴んでいる。
 ただ、どうしてだろう。ふと、身を持て余すような感覚に陥ることがある。
 このままでいいのだろうか、何かが物足りない。何かは何だと聞かれても、上手く説明は出来ないけれど。ここのところ、それは解明も発散も出来ずに、ずっとわたしの頭の中に、はっきりとしない靄が一面を覆っていた。
 何の展望もなく日々が過ぎ去っていくたび、わたしのからだもじりじりと枯れ果てていく気がした。何かをしたい気がするけど、何も出来ずに。砂を噛むような面白みのない生活の中で、強烈なスパイスをからだが欲している。
 それは、くだらないモーニングルーティンを撮っていても消化出来ないものなんだと思う。もっと、刺激的で、白熱して、からだの芯から浸されるような……。
 そんな非日常はどこにあるんだろう?
「おはよう、二宮」
 教室のおよそ真ん中らへんの座席に、すでに二宮が座っていた。わたしの声につられ、二宮が顔を上げる。
「一限なのに早いね」
「ああ」
「今日までの提出課題やってきた?」
「当たり前だ」
 二宮は鉄仮面を崩さず、にべもなく吐き捨てた。まっすぐに皺をのばされたバンドカラーシャツを着こなした、端正な佇まいには、付け入る隙も無い。朝見たばかりの熊のような男の寝起きのすがたとは、すべてが対象的だった。
 二宮のふたつとなりの席を引き、腰を下ろした。彼はすでにノートとペンケースを机の上に広げていた。シンプルイズザベスト。彼の持ち物はこの一言で表せられる。
「そういえば二限の情シスって休講なんだっけ?」
「そうだ」
「二宮ヒマ?キャンパスの近所にさ、お洒落なカフェが出来たらしいから一緒に行こうよ」
「興味無い。他のヤツを誘え」
「えぇ、いいじゃん。ちょうど授業のことで聞きたいことあるし。ランチプレートもあるよ……行かない?」
 ちらりと、二宮の顔を伺う。彼は常に無表情を保っている。だけど、本当に嫌な時は本当に嫌そうな顔をするので分かりやすい。
「……仕方ないから付き合ってやる」
「上から目線」
 本鈴が鳴った。同時に教授が教壇に上がる。黒板の上に飾られた時計は、九時ちょうどを指していた。
 そういえば、太刀川はちゃんと起きただろうか。単位がやばいなんて言ってる癖に、まともに授業を受けようとしないから。留年救済用の課題提出に夜なべ付き合わされる未来が見える。
 スマホを取り出し、太刀川にメッセージを送った。『起きた?大学行きな』母親みたいな文面だ。
 既読はすぐに付かなかった。元からあまり期待もしていない。スマホをトートバックの中へ放り込む。正面を向くと、となりから二宮の視線を感じた。
「太刀川か」
「すごい。何で分かったの」
「そんな顔をしていた」
 ……どんな顔?尋ねるより早く、二宮は前方の黒板に顔を向けた。相変わらず、その固い表情筋はぴくりとも動かない。

 二宮は、一見取っ付き難い雰囲気だけど、程良い距離感と波長を掴めれば、そこそこ仲良く出来る。
 二宮とはボーダーに入隊したタイミングも歳も同じで、いわゆる同学年の同期にあたる。ボーダーの中で仲良し順に番号を付けるなら、二番目くらいに彼がいる。(一番は望。太刀川は彼氏なので除外、一応)
 そして、案外、人付き合いは良い方だ。誘えば、本当に嫌じゃなければやってくる。カフェに然り、飲みに然り。
「ジンジャーハイボールってジンジャーエールの味しかしないから、アルコールとして酔えなくない?」
「別に酒の味を楽しもうと思わない」
「やっぱり二宮って子ども舌?」
「黙れ」
 人の飲み物にケチをつけるなと睨まれる。黄金色に波立つグラスが、天井の電球のギラつく投光を吸い込んで、二宮の口元に傾けられる。緩やかに心地の良い酔いが回っている頭では、それが喧しい居酒屋の店内には相応しくない、とても綺麗な色に見えた。真夏の小麦畑みたい……。ところで、「心地の良い酔い」って口に出してみたい日本語だ。
「最近、よく俺のことをメシに誘うが」
 黄金色から口を離した二宮が話し始める。
「うん」
「太刀川と上手くいってないのか」
「太刀川?なんで?」
「付き合ってるんだろ」
 二宮の言葉に一拍置いた。酔いが回っていても質問の答えは分かっている。
「付き合ってるよ、普通に」
「普通ってなんだ」
「普通は、普通でしょ。そんな毎日ドキドキしたりハラハラしたりすることはないけど、順調に付き合ってるよ、多分。太刀川とも飲み行ってるし。今日はシフトらしいけど」
「この店もアイツと一緒に来たのか」
「え?うーん、太刀川とは無いけど、たしか望と一回来たかな……」
「そうか」
 二宮はただそれだけ呟いた。深い話でも無いのに深掘りしてくる。太刀川とわたしの恋愛話なんて、この世でいちばん興味無さそうなのに。ジンジャーハイボールは何杯飲んでいたっけ?
 テーブルの上の、ぷっくりとした明太子入りの卵焼きに箸をつけた。一切れを口の中に放り込む。やけに美味しく感じるのは酔いの力もあるからだろうか。望と来た時に食べたものなのかも覚えていない。
 別に、二宮とどうしてもここに来たくて来ている訳でもない。カフェだって居酒屋だって、二宮の都合が空いていたし、誘ったら来てくれたから。同じ学部で同じ授業も取ってるし、そこそこ仲が良いんだし、必然的に二宮がいちばん誘いやすい相手になるのだ。
 二宮は綺麗な箸使いで同じ卵焼きをつついた。どろりと薄紅色の具が僅かに盛れ出した黄色い物体が、彼の口元に運ばれていくのをぼんやりと眺める。咀嚼する口の動きが無くなったところで、彼はまた口を開いた。
「お前は自分の状況を見誤っている」
「……なにが?」
「太刀川とお前だ。合ってないだろ、全く」
 二宮は淡々と告げた。さっきまで話題になっていた、情シスの講義内容とか、店のBGMの曲名とか、太刀川の悪口とかを話すときと同じような声のトーンだった。あまりに平然と語るので、何を言われているのか理解がワンテンポ遅れる。
 合ってない。二宮の言葉がぐるぐると頭の中を駆け巡る。
「……別に大きな喧嘩もしてないし、いつも一緒にいるよ。一緒にいても、ストレスじゃないし」
 太刀川のことは好きだ、と思う。好きでもない男を頻繁に部屋にあげて、長時間居座らせたりしないから。それに、たまに孤月を振るってるすがたを目にすると、かっこいいなと思う。
 ドキドキしないっていうけど、大人の恋愛って大体そういうものなんじゃないだろうか。付き合いたてのティーンエイジャーだったら話は変わるけど、成熟したハタチのふたりだ。お互い、燃やせ沸かせの熱情を送り合う相手でも無い。
 たしかに、太刀川はすべての採点項目で満点を取れるほど、わたしという人間にベストフィットしていない。けれど、満点を取れる人間はあと80年生きても現れないのは承知している。
 だから、ベターフィット。太刀川はわたしにとってそんな人間だ。恐らく、向こうもそう思っている。
「お前らは惰性でだらだらと付き合ってるだけだ。お互い本気じゃないから不和も軋轢も起きていない」
 二宮は食べることも飲むことも辞め、静かにわたしの顔を見つめていた。厚い皮の面の頬は、アルコールによって少し赤らんでいた。
「お前は頭は悪くないし、周囲の環境の柔軟性が高い。視野が広く、戦術的なことを話していても的外れなことは言わない。俺はお前を評価しているが、ひとつだけカバー出来ない欠点がある」
「なに?」
「あのバカと付き合ってることだ」
 思わず吹き出しそうになった。いや、笑っちゃダメなんだろうけど。
「太刀川を恋人として選んでいること自体正気を疑うが、それを良しとして現状に満足している思考回路が理解出来ない。まともに考えれば分かるはずだ」
「……珍しくお喋りだね、二宮。太刀川となんかあったの?」
「……どちらかと言えば、お前に起因する」
「わたし?」
「お前を口説いているんだ」
 ……これも吹き出していいところ?
「本気だ」
 静寂がバケツからひっくり返されたようだった。一気にからだじゅうの皮膚が、居心地の悪い緊張感に逆撫でされる。
 目の前の男からのまっすぐな視線に耐えられず、ゆっくりと顔を背ける。テーブルの上のジンジャーハイボールを見つめる。まだ三分の二ほどグラスに満たされていた。
「……えっと、口説かれてるの?今」
「そうだ」
「そうですか……」
 顔は上げられない。ジンジャーハイボールから自分のウーロンハイに視線を動かす。これもまだ半分以上残っていた。
「お前はどうなんだ」
「わ、わたし!?」
「お前しかいない」
「え、あの、彼氏がいるのですが……」
「だから、お前には合ってないと言った。とっとと別れるべきだ」
「……合ってる、合ってないとか、なんで分かるの」
「お前の顔を見れば分かる」
 顔。思わず、汗ばんだ手のひらで自分の両頬を挟んだ。一体、二宮にはどんな顔をしている女が瞳に映っているのだろう。
「それに、俺の方がお前を満足させることが出来る」
 冷凍庫の中の製氷皿がパキりと割れて中身の氷が空気に触れるような容易さで、二宮の言葉がわたしの外殼を打ち破り、中身を熱で溶かそうとする。だめだ。わたしの中の理性の糸が、酔いの力でふにゃりと張りを失いかけていた。
 今のわたしが、考えるべきこと。自制。自制、拒否、防御。強制的に頭と心臓を冷却させる。細く長く息を吐く。生暖かい吐息の中から、アルコールの匂いが滲み出ていた。
 テーブルに重たくのしかかる得体の知れない緊張感を破ったのは、二宮だった。
「帰るか」
「帰る!?この状況で!?」
「この場で残っていても結論は出ないだろう」
「結論……」
 そうか、ボールはこちらにあるのか……。通説に則るならば、告白をされたら返事をするもので、今わたしはそれを要求されている立場にある。
 胸が相変わらず気持ち悪く混乱している。何かがおかしなことになってしまった。脳の重鎮にある思考回路に仕付け糸が絡まって、まともに働かすことが出来ない。
 二宮は冷静に伝票を確認していた。まるで、今日この日の仕事はすべて終わったと言わんばかりのおもさしだった。わたしばかりがかき乱されているみたいじゃないか。

「お前飽きたの?ユーチューバー」
 恋人の男がわたしの部屋へだらだらと無益な時間潰しにやって来たのは、二宮と飲みにいったあの日から三日後のことだった。
 夜のシフトの時間まで、何も予定が組まれていない、うららかな休日の午後だった。太刀川がこの部屋を訪れてから三十分ほど、わたしはシンクに溜まった皿を洗ったり、浴室乾燥をしていた洗濯物を取り込んだり、自分の恋人の存在にかまけることなく家事に忙しなくしていた。
 太刀川は、フローリングの床に長い足を放り投げている。壁際のシェルフに飾られたGoProを眺めていた。
 棚にはヨガマットやリングフィットのコントローラー、手芸セットが新品同様のすがたで、ホコリを被って眠っている。みんな、わたしが退屈から逃れようと安易に手を出してみたものの、三日と持続出来なかった趣味未満のものたちだ。あの棚に飾られることは、わたしの中の突発的なブームが去ったことを意味する。
「最初からユーチューバーになろうと思ってないよ。動画編集でもはじめてみようかなと思っただけ」
「で、なんか動画作ったの?」
「作ってない」
 ラグの上に胡座をかいている太刀川は暇を持て余した手で自分の顎髭を摩りながら、ふうんと相槌を打った。心底どちらでも良さそうな反応だった。
「次は何にハマるんだ?」
 退屈の発散道具に満たなかったものたちが詰められたシェルフから視線を滑らせ、太刀川はわたしの顔を見上げた。
 純粋な興味からの確認。その意味で問われているはずなのに、わたしの心臓がぎゅっと掴まれた気がした。二宮との間に起きたことなんて知ってるはずないのに。
 努めて平然と、落ち着いた顔色を作り口を開く。
「わかんない。まだ、新しい趣味に出会ってないから」
「今度は俺も混ぜろよ」
「え?」
「退屈しのぎ」
 太刀川はベットの側面に背を預けたまま、立ち惚けるわたしの左腕を引いた。引っ張る力によってわたしのからだが男の元へなだれ込む。腕は捕らえられたまま、折り重なるようにわたしは太刀川のからだを跨っていた。
 空いた方の手がわたしの下顎を咥える。ゆっくりと、だけど強引に、わたしの顔が上を向く。黒い瞳と目が合う。いや、目が合うというより、黒い瞳がわたしを覗き込んでいた。
 太刀川の顔が重なる。唇が重なる。ふたりの輪郭がひとつの線で繋ぎ合わさる。唇の隙間を縫われ、口内を硬めな舌先で塞がれる。親猫が自分の子どもの首元を噛んで躾けるように、太刀川はわたしにキスを何巡にも刻み込んだ。
 鼓動が不自然な音を立てる。嫌な感じがする。蕩けるくらいの丹念な口付けの狭間で、不吉な予感が肌をなぞり上げていった。
 意識の外側で、部屋のチャイム音が鳴る。それは突然だった。誰かがこの部屋を訪問する予定は組まれていない。
 不吉な予感が無機質な機械音となって、ふたりだけの部屋をかしましく叩いていた。
「お、来たか」
 太刀川はキスを辞めて、わたしから顔を離した。とても呆気ない。繋がっていた唇はあっさりと別れ、彼はわたしの元を立ち去った。音の鳴る玄関に、向かっていく。混乱した。わたしを置いて進んでいく一連の流れに、置いてけぼりにされている。
 ガチャリと扉が開く。玄関先から話し声が聞こえる。ひとり、ふたり。太刀川と、だれ?
 足音が連なって、リビングで止まる。ニヤニヤと笑う太刀川の後ろに、彼が居た。
「に、二宮?なんで?」
 心臓が縮み上がった。二宮は平然とした表情で、わたしの部屋の中に居た。彼がこの空間に居ることは、とても不自然だった。完成された絵画の中に、一滴の邪魔な絵の具を垂らしたように。
「え?なんで、どういうこと?」
「お前、言ってなかったのか」
「いや、俺が言う前に二宮が来ちゃったから」
「どうせ面倒がって後回しにしていたんだろ」
 二宮の言葉に太刀川は悪びれる様子もなく、ベットに腰掛けた。わたしのベットだ。けれど、彼はいつも自分の所有物のように扱っている。
「お前にした話を太刀川にも話した。お前たちは別れるべきだと」
 背中に得体の知れない汗が流れ出す。部屋の中が急激に凍らされている。そう感じたのは、わたしだけだった。彼らは至っていつも通りの表情をしている。
「太刀川にお前が合っていないことを伝えたが、こいつは聞く耳を持たなかった」
「いや、持とうとする方がおかしいだろ」
 ベットの上の男は可笑しそうに笑っていた。不思議だ。わたしは全く笑える余裕が生まれなかった。
「ただし、お前を自分から奪うことが出来るならそれで良いと言った」
「奪うって、なに?それで良いって……」
 投げかけられた言葉をかき集め、必死にその意味を繋ぎ合わせようと、頭の中を巡らせた。からだじゅうに張り巡らせられた血管がどくどくと、わたしの心音に呼応している。
 二宮がわたしの肩を掴む。くたびれたスウェットに皺が波たち、中身の骨まで捕らえるくらいの力で、彼のからだへ引き寄せられる。足の裏が滑ってもたれかかる。二宮のからだが重なる。彼はわたしの頬に骨ばった指先を添えた。顔が重なる。呆然と立ちすくむわたしに、ベットの上の男は問いかけた。
「なあ、退屈は殺せたか?」

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