おかしいとは思ってた。
もしかしたらって期待してた。




「――おめでとうございます。3ヵ月ですよ」
「本当ですか・・・・!」
「ええ、本当に、おめでたい」


乙女の日が全然巡ってこなくて、病院に行ったら嬉しすぎる報せ。
私が、母親・・・・・!

ちらりと夫の方を見るといつも通りの無表情でただ担当医の方を見つめていた。



「まだまだ安定してませんので、激しい運動は控え、身体を労わって下さいね」
「はい・・・ありがとうございます」
「いえいえ、本当におめでとうございます」



病院をあとにした私達は肩を並べて自宅への道を歩く。
私は幸せで胸がはちきれそうで、気持ち悪いほどにやけてるのに対して、夫・・・国光は全くの無口無表情。
こんな時くらい笑ってくれてもいいのに。もう慣れたけど・・・。
私達は結局一言も言葉を交わさないまま家に着いた。




日も暮れて街が静かになった頃。
妊娠したとはいえまだまだ動ける身体はいつも通り洗濯をしていつも通りご飯を食べていつも通りお風呂にも入って、
もう一日が終わるのを待つだけになった私はリビングでぼーっとしていた。



「―――3ヵ月ですよ」



お医者さまの声が忘れられない。
ああ・・・・やっと、私がお母さんになるんだ・・・
やばい、目頭熱い。


一人で浸っていると、国光がリビングに入ってきた。
そのままツカツカと私の傍に寄る。


「・・・・・・。」
「あれ、どうしたの」
「・・・・・あ、」
「あ?」





「・・・・・・ありがとう・・・・・・」




・・・・驚いた。
やっと絞り出したようなその言葉の意味はすぐに理解できた。
何も感じないはずがない。だって父親になるんだもん。


私は小さく微笑んで「どういたしまして」と答えた。








―――・・・・



「あと何カ月だ?」
「2カ月」
「そうか」


もう何度目だろう、同じ質問をされたのは。
淡白なフリをして、でもそわそわしっぱなしなのが分かる。


「せかっちだねーまだ準備中なのに」
「むっ・・・」


だいぶ大きくなったお腹を撫でながらからかうように言う。
・・・・まあ私もカレンダーにはみだすくらい花まる書いたけど


お腹に乗せてる私の手に大きな手が重なった。
その手を慈しむように動かされる。



「早く出てきて欲しいんだ・・・・なんせぱぱ≠ノなるんだからな」
「ぷっ」


思わず笑ってしまった。
怪訝な顔で国光が私を見上げる。


「なんで笑った?」
「ぱぱって・・・・国光が言うと不自然」
「・・・・・そうか?」
「そうだよ」



まだ納得いってないらしい彼を見つめながら私はもう一度笑った。
昔は生真面目で堅物だったのに・・・・


「ぱぱ、ぱぱね。うんうん」
「もういいだろう」
「ごめーん」



お腹の中の我が子へ。
あなたのぱぱ≠ニまま≠ヘ幸せでいっぱいです。
だからあなたも、早くこの幸せに加わってほしいな。



世話に砕ける



あとがき
彼と私は家族です。様に提出。
遅れて本当にすみませんでした。

手塚にぱぱって言ってほしかっただけですすみません。

2012.03.13

-3-

|