――彼女が出来た。 ずっと付き合いのあった幼馴染にそう告げた。 幼馴染とは別の、全然違ったタイプを彼女にした。 そう告げた時、奴は一瞬驚いた顔をして顔を伏せた。 「彼女が、出来たんじゃ」 もう一度繰り返す。 息を呑むような音が聞こえたと思ったら、そいつは勢いよく顔を上げた。 満面の笑み。でもどこか・・・不自然な笑み。 「おめでとう」 一言、そう返された。 今度はこっちが驚いた顔をする。 絶対、嫌な顔すると思ったんに。 もやもやした何かが、心に生まれた。 「・・・それだけか?」 「それだけって?」 「もっと、こう・・・あるじゃろ」 「ははっ、何言ってんの!なんもないし!」 いつもよりぎこちなさはあるものの、普段見せる様な顔で、普段と同じ様なことを言う。 どうして、そんな風に振舞えるのだろう。 もやもや。もやもや。 俺の方が今、焦ってるなんて。そんなの、信じたくない。 「・・・・もう、一緒に帰れんし、」 「当たり前じゃん!彼女送ってかなきゃいけないんでしょ?」 「もう、あんま家に行けんかもしれんし、」 「あーまあちょっと寂しいけど浮気疑惑掛けられたくないしねー」 「今まで通りにはいかんかもしれん」 「分かってるよ!」 まだ、笑っちょる。 なんでこいつは我慢するんじゃろうか。 「雅治なら絶対彼女出来るって思ってたし」 「・・・・・」 「だって、昔っからもててたしね」 「・・・・・」 「あーもうこれで私もお払い箱かー。まあいちいち部活待たなくていいし、気は楽だけど!って、どうした?」 「・・・・んで、」 「ん?」 「・・・・なんで、無理して笑うんじゃ」 「・・・・・え・・・・」 気持ち悪く笑っていた顔が硬直した。 それを見て自分でもはっと気づく。 なんで?なんで俺はなんでなんて聞いたのか・・・ さっきからもやもやしてるこれはなんだ? ・・・・なんだ・・・・? 「え、・・・なんでって・・・だって、友達に彼女が出来たんだし・・・」 ト モ ダ チ ――・・・ 「それに、」 「もういい。聞きとうない。」 「え」 「帰るわ。彼女待たせてるきに」 「え、あ・・・うん。」 「じゃあ。」 「・・・・じゃあ。」 幼馴染一人残して教室を出た。 何も言われなかった。その事実がまたもやもやを膨らませる。 イライラしながら扉を後ろ手で閉めた。 ドアをぴしゃりと閉めたあとに聞こえてきたのは、堪える様な嗚咽とすすり泣く声だった。 あの時泣きたかったのは (本当は俺の方じゃった) あとがき アイデンティティの確立に提出! ありがとうございました! 2012.01.13 -4- | |