「お小遣い増やしてよ」 これが私の口癖だ。 ろくに友達とも遊びに行けないほど、私の財布は薄かった。 何故なら父が堅物で、お小遣いをあまりくれないからだ。 小学生の頃ならそれでもよかった。けど、中学となったら話は別だ。 せっかくの友達からの誘いも、ほとんど断らなくちゃいけない生活に、私のストレスゲージはもう限界だった。 「お父さん!お小遣い増やしてよ!!」 今日もまた、私はお父さんに不満をぶちまける。 黙々と新聞を読んでいたお父さんはわざとらしく溜息をつくと新聞を折りたたんで私の方をむいた。 「なんだ、またそれか」 「なんだ。じゃないよ!お小遣い増やして」 「駄目だ」 「なんで」 「お前、すぐ無駄遣いするだろう」 「しないよ!」 「お前は母さんの血が入ってるんだからな」 「ちょっと、それどういう意味」 「そうだよ、お母さんに失礼だよ」 「いいかすず、母さんはな、俺の財布の中身を勝手に全部消費したんだ」 「まじでか」 「おまけに自分の財布を出す前にだ」 「うわー・・・」 「てへぺろ!」 立場の悪くなったお母さんはそそくさと台所に戻っていった。 しばらくジト目でその方向を見ていた私だけどはっと我に返った。 「違うよお父さん今は私のお小遣いの話だよ」 「チッ」 「チッ!?お父さん今チッって言ったでしょ!!」 「それでなんだ、今日の夕飯はぬれ煎餅がいいって話か。俺もそう思う」 「そんな話してないよ!あと夕飯にぬれ煎餅って何!どんな家庭だよ!」 「こんな家庭」 「くっそおおおおおまともに返しやがってええええええ」 お父さんはどうしてもお小遣いを増やしたくないらしい。 いつもなら「ぱぴーの馬鹿っ!!」と罵声を吐いて部屋に戻るところだったが、今日の私は違った。 何が何でもお小遣いを増やしてもらわないといい加減困る。 ずっと思ってたことをついに口に出すと決めたんだ。 私は思いっきり声を張った。 「いい加減私ももう中学生だよ!お小遣い増やしてくれたっていいじゃん!」 「まだ、中学生だろ」 「でも周りの子はもっともらってるもん!」 「よそはよそだ。うちにはうちの教育がある」 「いっつもそればっかり!」 「はあー・・・・何が不満なんだ」 「全部だよ!お金無いせいで、私いっつも遊びに行けないんだよ!」 「小遣いなら毎月渡してるじゃないか」 「100円ね!!」 そう、何を隠そう私のお小遣いは月になんと100円なのだ。 これじゃあ缶ジュースも買えない。 100均の商品だって消費税のせいで何も買うことが出来ない。 友達の誘いだって、家で遊ぶとかじゃない限り受けるわけにはいかない。 中学生からしたら100円しか持ってないなんて金欠以外の何物でもない。 「昔のお前は100円でも喜んでたのに・・・」 「それは小1までの話じゃん!」 「100円を渡すと嬉しそうに両手を出してたすずはどこに行ったんだ・・・」 「そんな私はもう過去に葬り去ったよ!」 「まあそういうわけでこの話は終わりだ」 「ちょっと待て」 お父さんは平然と話を切って席を立った。 私の声を無視して自室へと戻る父の背中を見ながら私は盛大な溜息を吐いた。 お小遣い足りないんですけどぉ (今日もだめだったなあ)(私は買ってきた10本のうまい棒を見つめた) あとがき テニプリ密着24時Vに提出。 書かせていただいてありがとうございました! 2012.01.09 -1- | |