「以前より瞳が優しくなったね」

彼女はオレにそう告げたけど、彼女の瞳こそとても優しかった。何も恐れない、全てを受け入れる事が出来る瞳。そして時折見せる憂いを持ち、伏せた睫毛。オレはいつもそれに憧れていた。彼女の全ては自身の左目と匹敵するくらい特別で、大切な存在だ。

未だオレの瞳を逸らさず覗き込む彼女に「老けたからだよ」そう言ったら、ますます彼女は目を輝かせて「そうかもね」と笑った。それが無性にむず痒くて、緩んだ口元を隠せるマスクは本当に便利な代物だと思う。

「お前の瞳も充分に優しいよ」

発したオレの言葉に、今度は彼女が驚く素振りを見せた。ようやく目を逸らし、オレの瞳を解放した彼女は照れたように瞼を伏せる。その拍子に彼女の長い睫毛が頬を差して影を描いた。ねえ、知ってる?お前はいつも目まぐるしく、くるくると表情を変えるものだから、いつも追い付けないでいるんだよ。




カカシと一緒に歳を重ねたから優しい瞳になれたんだよ。

(ほら、また、)

お前はいつも安心出来るところへオレを誘導してくれる。オレの手を躊躇なく引いてくれるその小さな手にいつも甘えてしまうんだ。だから、そうだなあ。オレもお前と一緒に歳を重ねたから優しい瞳になれたんだと最近、思うんだ。




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