手がかじかんで冷たいよ。白い息と共に吐き出せばカカシは「ほら、」と自分の大きな手で私の手を包み込んだ。カカシの右手は温かくて少しだけ汗を掻いていたけれど、私はそれを嫌悪に感じなかった。何故ならば、私の左手もカカシの熱に助けられて同じくらい温かいから。

私は帰り際にいつもカカシという大きな忘れ物が無いか確認する。ギュ、と両腕でカカシを強く抱き締めれば、やっと私の心は一定の位置にとどまる。今日もカカシが隣にいてくれて良かった。カカシの温もりを感じることができて良かった。私はこの何とも言えない感情をいつも彼の耳元で囁く。



「手がかじかんで冷たいよ」隣で呟く彼女の頬は寒さで真っ赤になっていた。おまけに小さな手をこすり合わせている両手はそれ以上に真っ赤で、見てもいられなかった。彼女の左手を自分の右手で包み込むと予想通り冷たくて手の熱を奪われそうになったが、オレはそれを嫌悪に感じない。何故ならば、彼女の手の熱とオレの手の熱が中和して心地良いからだ。

彼女はいつも帰り際にオレを忘れないようにと強く抱き締める。そんな彼女の体を両腕でよりいっそう強く抱き返せば小さく震えた。泣いているのか?それとも笑っているのか?そっと彼女の顔を窺えば、後者の笑顔だった。はっきり言えばオレを忘れ物なんかに例えるなんて、ふざけていると思う。オレはいつだって今だってこうしてお前の隣に居るのに、それがどうして分からない。ふわり、彼女の香りが強くなると耳元から小さな声が聞こえた。オレはその声を聞き漏らさぬよう、必死になって耳を傾ける。


わすれものは、となり

(あいしてる) (しってる)

歌詞参考 秘密/aiko





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