しいていうならば、彼女は母親みたいな存在だった。例えば笑った時に出来る目尻の皺、彼女から香る洗剤と太陽の匂い、煮物に入っている里芋のしょっぱさ、それら全てが母親のような人物だと連想させるんだ。正直に言えば、オレは母親と過ごした記憶がない。だからこうして彼女と重ね合わせることで母親を探し出すしかないんだ。

「ね、カカシ。これから食事をする時には、この木のフォークとスプーンを使おうね」
「んー、なんで?」
「その方があったかいでしょう」

コトン。オレの目の前に置かれたものは、彼女が握っていた木のフォークにスプーン。そこに深い朱色のランチョンマットと茶色の木目が同化すれば、より暖色が帯びて優しく見えた。

(うん、あったかいね)

なんだか言葉にならなくて代わりに笑えば、彼女は屈託のない笑みを溢した。参ったなあ。オレより彼女の方が嬉しそうだ。
彼女の提案で置かれた橙で照らすランプも生成のレースの上に置かれたミツバチのマグカップも全て愛おしいんだ。












ね、カカシ。私、あなたのお母さんになってあげる。なんて言葉は決して口に出来ないけれど、あなたを守りたいの。さらに欲を言えば、カカシにはもっと幸せを感じて欲しいのです。




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