誰も話しかけないで。そう言って、オレに向けた背中には「拒絶」の二文字があった。

だから、オレは五歩ぐらい下がって、後ろを歩いてみた。こうして並んで歩いてみると、子供の頃みたいで懐かしいね。お前は昔から泣き虫で、オレはお前の面倒ばかり見ていたね。いつも泣いてばかりいるお前を見兼ねたオレはしっかりしろだなんて叱った時があったんだよ。ねえ、覚えてる?

「ちょっと黙っててよ」

強がりを言ったってオレには分かる。お前の小さな背中が泣いてるってことくらい。だからオレは、お前の背中にそっと語りかけるんだ。思いきり泣いてもいいよ。オレがお前の悲しみを受け入れるから。本当は泣き虫なお前も、愛しいんだ。

「うるさい」

涙声の彼女を引き寄せて、背中から抱きしめた。彼女は抵抗せず、小さな手で顔を覆う。ほら、肩の力を抜いてさ。たまには溜め息ではなく深呼吸をしてみなよ。

「大丈夫、オレがいるよ」
「きっと、うまくいく」

オレの発した言葉は自己暗示に近いものだったけれど、彼女に伝わればそれでいい。ありがとう。ようやく振り向いてくれた彼女の顔は泣き顔ではなく、笑顔だった。頬には涙が伝った跡がある。咄嗟に拭おうと手を伸ばしたが、強がりの彼女はきっとそれを嫌がるだろう。

だからオレは、彼女の涙に気が付かないフリをすると、隣に並んで、歩幅を合わせた。




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