「多分……僕が想像しているのと間違っていなければ」
「砕けて言えば時空間移動だな。過去や未来に己の身体を移すことだ」

全然砕けてない。

たったたったたったら〜 
たったたらたらら〜

……なんて、僕の中でBGMがこだましながら出てきたのは、某国民的ロボット。

あれだ、引き出しの中を開けたらそこは時限の間でしたっていう。
よく考えると、引き出しの中っていうのも凄い設定だ。
それが一番都合がよかったんだろうけど、ある日突然引き出しの中からワケのわからん物体が出て来たら、迷わず僕はその机を売り払う。

そうやって思考があれよあれよと別方向へ行く僕をよそに、会長さんは身体を半回転する。

そうして、部屋の隅の方へ腕を上げた。

「それで、ここに引き出し付きの机があるわけだが」
「まんまかよっ!!」

彼の手の先にあったのは、ポツリと置かれた学習机。

豪華な雰囲気のこの部屋に完全にのまれつつあるそれ……は。

僕のよく知る、その国民的ロボットの世話する少年の部屋にあるそれと、見た目ほぼ同じで。

……いくらなんでもそのずさんさはねーよ!

と、かましたツッコミの論点がズレていようがなんだろうがそれだけは許せなかった。

「まんまというと?」
「え、いや、えっと、もうちょっとそこらへんどうにかならなかったのかって」

待て、先走るな。

まだ肝心なことを聞いていない。
会長さんは引き出し付きの机があると言っただけだ。

僕がこの超次元的な展開に的外れな予想をしているだけで、それがただの机という可能性も十分あるはずだ。

「それで、その机がどうかしたんですか?」
「実を言うと、これで我々はタイプトリップが出来る」

外れていませんでした。
バッチリ当たってました僕の予想!


……嘘でしょ。


「……」
「どうした、突然黙り込んで」

黙り込むというか、どうしたらいいかわからなくなったっていうのが正直なところだった。


会長さんは椅子に座り言葉を続ける。

「驚くのも無理はないか。俺も去年これの存在を明かされたときは驚いたものだ」
「……会長さんでも驚くんですね」
「どういう意味だ」

そのまんまの意味だったけど、言い返しはしなかった。

「もしかしてからかってるとか、あります?」
「これについてか? あいにく冗談を言うのは好きではない」

ですよねえ……。
僕だってこれを他の人がいったのなら一蹴してやってただろうけど……なにせ、僕の前に立っているのは真雪さんなわけで。


まだ会って数十分だけど、相手がどんな人間かを見抜くのが得意な僕に言わせれば、会長さんはかなり会長しているね。
これで実は冗談でしたーとか言ったもんなら、そっちの方が問題だよ。


「僕そういう変なの信じている余裕はあんまりないんですけど」
「奇遇だな、俺もだ」

そういう回答求めているわけじゃない。

「だが、これは本物だ」
「はあ……」
「信じてもらえなくてもいい。身を投げれば分かることだからな」
身を投げるなんて真似をしたくない僕は思わず後ずさりする。
顔面変形手術を受けるハメになるから、外へは出れないが。

「君には、タイムトリップしてもらい、学校の経営を保ってもらう」

「……け、いえい?」

なんじゃそりゃ。

「未来へ飛ぶということだな。といっても、そう先じゃない」

話の概観が解らない内に、会長さんはどんどん話を進めていこうとする。

「ちょ、ちょ、たんま」
「なんだ」
「引き継ぎの話をするんじゃなかったんでしたっけ?」
「引き継ぎの話だ」

某アニメモデルの机を紹介することが?

「この学校の生徒会は、代々伝統的に、実に様々な仕事をこなしてきた。もちろん隠密にだ。今では一部しか残ってないみたいだが、これはその引き継ぎだ」

だから、おかしいだろその生徒会。

代々だろうが隠密だろうが知らないけど、残った一部がタイムトリップって、中々コアなものが残ったもんだ。

もしかして、毎日一時限免除っていうのも、これが理由なのだろうか。冗談じゃない。

「……それ、引き継がなきゃいけないこと?」
「生徒会長になったからには」

……結局、そういうことか。
退学か、この意味不明な世界に足をつっこむか。

究極の選択を前に、『人生諦めが肝心』という文字がデカデカと僕の前へ立ち塞がる。

「話を続けていいか?」
「どーぞ」

どうにでもなれ。
生徒会長になったとき同様、諦めの念が僕に立ち込めた。
SFチックな内容も、聞くだけならタダだ。

「先程も言ったが、飛ぶのはそう先の未来ではない。し、それほど頻繁でもない。そのままいけば経営難になり、学校が潰れる時代だ。その原因を上手く排除していく」

「ちなみに、どんくらい先なんですか?」

「それは──自分で確かめるといい」

肝心なところ曖昧にボカし、会長さんは席を立ち上がる。

「自分でって」
「そっちの方が楽しみがあるだろう」

ねぇよ。
聞くだけでもおぞましいのに、自分で体験しようとなんて思わない。

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