……とまあ、下らない布石はここまでにしておいて。

初めて入る生徒会室への感想はただ一つ。

……広っ!

なにこれ。おかしいでしょ。あからさまにここだけ何か違う素材使ってる。え、廊下の風景とかみ合わなくない?
私立だからどこも綺麗には綺麗だけど。応接室だってこんなんじゃなかったはずだぞ。VIPルームか何かか?

窓は黒のカーテンで覆われているけど、中の蛍光灯によってしっかりと室内は明るい。眩しすぎるくらいだ。
こうやって生徒会室はいつもカーテンが閉められていたのか。道理で今まで外から中を見たこともないはずだ。

だからって。
まさかこんな光景が広がっているなんて、誰が思う?

「どうして入口で立ち止まるんだ。早く着席しろ」

きょろきょろと室内を見渡していたら、さっきの声が聞こえた。
声の先にいたのは長身の生徒。どっかで見たことある……ような……?

部屋にはもう割と人が入っている。多分全員役員だ。そして僕たちが最後だったってわけか。

「わあー、綺麗ですねー。生徒会室がお化け屋敷っていう噂は嘘だったんですね」

ふかふかの椅子に座ったら川南が感嘆の声をあげた。

「お化け屋敷?」
「先輩知らないんですか? 生徒会室って常に施錠されてるじゃないですか。中は一般生徒は見れないからいろいろ言われてますよ。お化け屋敷とか、ただの空き教室だとか」

噂に乏しい僕がそんなこと知るわけがない。

「はっ、そんな噂があるのか。興味深い」
「あ、生徒会長。どうもー」

川南が僕たちにさっきから指示を出す生徒へ挨拶をした。
生徒会長? ああ……どっかで見たことあると思ったら。そうだ、今年度の生徒会長か。

生徒会長さんが最後に自分が上座に座り、話し始める。

「さて……全員そろったようだし、引き継ぎ会を始める。生徒会長の真雪だ。……といっても、特にすることはない。仕事内容についてはだいたい分かってると思うから、やっていく中で現生徒会メンバーでサポートしていく」

だいたい分かってるの前提ですか。
あの、全然分かってない人がいますよ。僕です。

とは言えず、僕は素直に生徒会長の話を聞いていた。今の生徒会役員は彼しかいないらしい。


「授業は通常授業時は5時限目まで。必要以上は免除されない」

……免除?
うちの学校は1日6時限目。5時限目ってことは、残り1時間は?

「おい、川南、免除ってどういうことだよ」
「先輩何も知らないんですね。生徒会役員の執行以上は毎日1時限授業に出なくていいんです」
「は? 単位は?」
「あー、もー、後で分かります!」

とうとう川南にまで投げ出されてしまった。しょうがないだろ。不可抗力って奴だ。
その間にもつらつらと会長さんは言っていたけど、僕のノーマルな頭にはどれも入って来なかった。

「じゃあ、新生徒会長の馬渡。挨拶をしろ」
「え?」

突然会長の視線が僕に向けられたかと思えば、呼び捨て名指しで挨拶の要求がきた。
挨拶? こんにちはとか、おはようとか?

って馬鹿なことを考えるくらいに予想外のことだったから、つい聞き返した。

「え? じゃない。早く言え」
「あー……えー、生徒会長になった馬渡です……よろしく…って、ちがーう!」

ノリツッコミ。痛い。あー他の人の視線が痛い。
でも言うことは言わなきゃだな。きっと死んだじいちゃんだって生きてたらそう教える。

「あの、僕、おります」
「……何言ってるんだ?」
「だから、生徒会長職降ります。他の人探して下さい」

そのときの会長さんのポカンとした表情といったら。
さすがに驚いたみたいで、他のメンバーもざわりとした。

だけどそれも一瞬で。

「あらー、それはダメでしょ。なになに、今年度の会長大丈夫ー?」

いかにも頭の軽そうなやつの声が耳に入る。駄目だ、現実を見ちゃダメだ。

「何手で顔覆ってるわけ? しっかりしてよー」

あ、ダメだこいつはウザい。
即座に判断した僕は手を外すと声のする方を見た。川南の隣の隣に座るそいつ。

「俺だって執行、やりたくねえもん」

にっこりと笑うそいつは僕の部下だった。いやまだ違うけど。部下って表現が合うのかも分からないけど。


[ 4/14 ]
*← 小説top →#
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -