そんなこんなで僕は音楽室を目指すけど、音楽選択してない僕がすんなり音楽室に行けるわけもなく。

キョロキョロと放課後の校内でうろついてた。

……音楽室、どこですか。

マイゴじゃない。違います。

校内で迷子とか嫌だそんなかわいそうな感じになりたくないけど、あれもうこれなってんのかいやいや断じて違う大丈夫だよな。

南校舎の廊下に差し掛かると。

「音楽室行くところか?」

うーむ、なかなか会いたくないヤツとエンカウント。

成海さんが長い足で歩いてた。
わざわざ長い足っていいたくなるほど長い。今日も長い、ぬかりなく長い。

そんで何故長い足で僕に声をかけてきた。

「そうだけど」

行くっていうか、探してるんですよーとは言えず。

「もう喋りかけないんじゃなかったっけ」

とりあえず昔を引っ張るよね。昔ってか、二ヶ月前?

「会長と副会長が喋らない生徒会はよくない」
「む」
「だからあのコトバは取り消し」
「むむ」

もうやだこの人の正論。完璧なのが嫌だ。

「音楽室へいくなら、一緒に行こう」

あら、ぴかりんへの行路発見。
しかしまだまだ甘いなあ、成海。

「や・だ」

僕がお前と一緒に行くと思ったか!

「…行き先は一緒だろ?」
「僕後ろからついてく」
「……」

成海さん物申したげだけど気にしない。

「だからほら、先早く歩け」
「もしかして場所がわからないのか?」

なんでこの人こんな察しいいの?

「……」
「……うん、じゃ」

むくれたら空気よんで歩きだした。そーよね、テンポ良くいかないとね。成海さん、さっすが。


音楽室の扉の前に立つとピアノの細い音が流れてきた。
誰か生徒でも引いているのか?
そりゃ部活とかはあるだろうけど、(男だけの)合唱部は別に本拠地を構えているはずだ。

横の、いつも先生がコーヒーとか飲んだりしているらしい部屋に鍵はかかっていた。
成海が音楽室に入るのを、後ろからついていく。
その背中に隠れて、初めて入った音楽室は最初よく見えなかった。

「失礼します、光先生。少しお時間いただきたいんですが、今大丈夫ですか?」
「ああ、いらっしゃい」

成海の声に反応して、ピアノの音が止んだ。
弾いていたのが本人だったみたいだ。
ぴかりん中々繊細な音出すね。

「成海です」
「馬渡です」

成海の背中から顔だして、ぴかりんの姿を見ると思わず何かを吹きそうになった。
ぴか……りん……?

「新生徒会役員かな」
「は、はあ」

肩まで届きそうな細いブロンドの髪の毛、シワ一つないワイシャツにシンプルかつ華やかなネクタイ。裾を出しているのにだらし無さは皆無の上下組み合わせ。立ち上がるとスタイルのよさが伺える。


がしかしオッサンである。
英国貴族みたいなオッサンがいた。
無駄にダンディなオッサンだった。

ものすごく平伏したい。
ぴかりんとか……ごめんなさい……。

「ハル」
「え? ああ…」

ぽかんとしていた僕の肩を成海がポンと叩く。挨拶、ね。

「えっと、新しく会長?になりました馬渡です。前会長から挨拶を……ってああ、忘れてた」

ポケットにしまっていたマスクを取り出して、ぴかりんの前で装着。ご存命祈るって、相当だからな。

「? 風邪でもひいてるのかな?」
「いや、会長さんがくれて……あ」

もしかして、言っちゃいけないこと?


僕が慌てて口元を抑えるとぴかりんはふわって笑って。

「ああ、幸平か」

幸平って、そういえば真雪さんそんな名前だったっか。
先生が生徒呼び捨てってアリ?

「何か言ってた?」

笑顔だけど逆らってはいけないオーラを感じる。素直に話すが吉だろう。
言ったの僕じゃないしな。

「マスクくれて、ご存命を祈るとかなんとかかんとか…」
「ふーん。馬鹿だなあ、あいつ」

真雪さんを馬鹿呼ばわりするぴかりん。

「会長さんと何かあったんですか?」

見た感じでは別に普通の教師やってますな感じだけど、一年間生徒会役員としてやってきた真雪さんがあそこまで嫌悪しているのは不安だ。

「ん、んー」

ぴかりんは顎に拳をあてて何か思案するよう僕をちらちら見遣り、そうして手をそのままこちらへ持ってきた。

片方の頬に手のひらを添えられ、目と鼻の先にきたぴかりんの顔。

……え。

「大丈夫、俺がこうやって唇狙うのはあいつだけだからね」

止まらなかったらそのままキスされるような、距離とポージング。

「は…、あああああ!?」

すかさずぴかりんの手を振り払い、後ずさる僕。音楽室の広さに感謝だ。

「何してるんですか先生」

本当は罵声を浴びせたかったけれど、そのときばかりは先に声をあげた成海の声と僕の心の叫びが一致していた。

教師にあるまじき猥褻行為。なのにぴかりんは平然として。

「あれ、初な反応。大丈夫大丈夫。もう触らないし。今のは初対面の挨拶。そんな窓際まで逃げなくても…はは、睨まないでよ成海くん」

成海睨んでいるのか?
僕から見ると微妙に微笑んでいるようにしか見えない。ステキにビューティフォーなアルカイックスマイル。それを言うならぴかりんも負けてないが。


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