Thanks a lot!


お礼SS

-*-海馬瀬人-*-
 双眼に灯る青色に見惚れていると、華麗に伸びる指先は何枚かのカードを束ねている。やがて立ち上がった彼に、服の裾がふわりとなびいて従う。

「行くぞ」
 そう言って足を止めている彼に歩み寄る。ふと、気付きに表情を変えた。以前は、言葉を発した端から歩み出す彼の背を追ったものだ。上方に顔を向けると、彼の表情が微かに和らいでいた。



-*-ランチア-*-
 車が静かに止まる音で目を覚ます。細かな雨音がフロントガラスに走る。運転席から降り、助手席のドアを開けたランチアに迎えられた。

「いいか」
 頷いて顔を向けると、差し出された手を握り、差し向けられた傘の軒に降りる。空気はふんわりと角なく和み、ランチアと笑みを交わした。



-*-山崎退-*-

「ザキ」
「ザキィイイ」
 彼の名はそれがあだ名で合っても、聞いていると何か引っかかる。カタカナなんだろうけど、何か漢字に変換されそうな……いや山崎なんだから崎か。でも、言葉の感じとしてなんか、違和感を覚える。

「さっ、行こう」
 自分を呼ぶ声から逃げて来たと思われる山崎。

「山崎さんってどうしてザキって呼ばれてるんですか?」
 彼はにこりと笑った。俺が自分で名乗っていたからだよ、と、言われると違和感が記憶と合致して光のように体を貫いた。

「えっ! じゃあ、やっぱり山崎さんってあのマウンテン殺鬼だったんじゃ」
「昔の話」
 人差し指を静かに口に当てられる。のどかで温和な彼の笑顔を前にしていると、泡のように顔の熱が上がっていった。


-完-

ありがとうございました!

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