自分以上に大切なものなんてあるはずがないと思っていた。バスケだって自分のまわりにいる人間だって、そこまで大切にしていたわけではなかったし、いなくなったらいなくなったでそのときだとも思っていた。それはもちろん、あいつに対しての認識もそうだったのだ。それどころか俺が1番蔑ろにしていたのはあいつだったかもしれない。たしかに会えば楽しかったし不思議と肩の力が抜けて落ち着けたもんだから、1番連絡を取っていたのはあいつだったかもしれないが、それでも俺が1番大切にしていたものはいつだって俺1人だけだった。
そんな俺がいまさらどんな顔をしてあいつがもたらしてくれたものの大きさを伝えることができるというのだろうか。さつきに頬を引っ叩かれて以来、1度だってあいつの名前を口にすることすらできないでいるような俺なのに。

だというのにいつだって思い返すのは、俺の隣で笑っていたあいつの少しあどけない笑顔と、俺以外の誰かの隣で嬉しそうに笑っていた少しだけあのころより大人びたあいつの横顔だ。まったく嫌になる。本当に、どんな顔をしてそれを口にできるというのだろうか。まだおまえのことが忘れられねえんだよ、隣にいてくれよ、なんて正気の沙汰じゃあない。


「どうしたんスか青峰っち。いつにもまして今日は上の空っスね」
「うっせーな俺だって悩むことぐらいあんだよ」
「青峰っちが悩むだなんて天変地異の前触れとしか思えねえっスよ。明日は槍でも降ってくるんじゃねえの」


そんな冗談を口にしながらよく名前の分からないコーヒーを啜る黄瀬は、それでも俺が上の空なのをまったくもって気にしていない風で、スケジュール帳をぺらりぺらりとめくりながら今後のスケジュールなんかを気にしていた。そんな黄瀬の姿は俺がどれだけ不機嫌そうにしていても笑いながら俺の傍にいてくれたあいつの姿を彷彿とさせて、だからこそ黄瀬にこんな話をしようと思い立ったのかもしれない。「なあ」普段の俺なら、有り得ないことだ。


「おまえは、忘れられねえ女がいたら、どうする」


その瞬間、黄瀬は飲んでいたコーヒーを盛大に噴き出した。まあそれは俺にはかからなかったから怒ることはないが(中学時代や高校時代なら1発ぐらいは殴りつけていただろう)それにしてもモデルらしからぬ顔をしながら背を丸め咳き込む黄瀬の背中を叩くでもなく見守ること数分。ようやく黄瀬は復活したらしい。すこしばかり枯れた声ながらも「青峰っちが恋なんて似合わなさすぎるっスね」なんて口にした。
まあそれはそうだろう。俺の高校時代を知っているやつらならば、例外なくみんながそう言うに違いない。それに俺だってそう思う。我ながら身勝手な男だ。そりゃ他の男だって選ぶだろうし、実際あの男はあいつに似合いのいい男だった。

しかし黄瀬は普段ふざけてばかりいるくせに、相手が真剣だと分かるや否や自分も真剣に意見をぶつけてくる男だ。これもまた高校時代は知らなかった側面だったが、だがべつにこれは成長したから変わったわけではなく、元々黄瀬自身が持っていた美徳だったのだろう。こういうときにもまた、自分がどれだけ他者に興味がなかったのかが浮き彫りになって嫌になる。


「そうっスね…俺も忘れられない子、いるっスよ」
「そいつとはどうなったんだ」
「なーんも。たぶんね、俺はその子とヨリを戻すことになっても絶対うまくいきっこないって分かってるから、そう割り切れるだけなんだろうけど」
「なんでうまくいかねえって決めつけてんだよ」


そう詰め寄ったのは、自分はそう思いたくなかったからという身勝手なエゴなのだろう。けれど黄瀬はそんなことになど気にも留めずに話を続ける。


「俺がその子と別れることになったのは、俺がモデル活動ばっかりでその子を寂しがらせちゃったからっス。そんで俺と付き合ってるって理由だけでその子はいじめられてた。そんなその子を守れなかった俺の不甲斐なさが全部の原因なんスけど、もう頑張れないって言われちゃあね。これ以上頑張ってとも言えないっスから」
「……そうか」
「その子はどんな子だったんスか?あの青峰っちを一途にさせるってよっぽどの子っしょ?」


聞かせてよ、そんなふうに軽口めいてあいつの話を促す黄瀬の言葉に乗せられて、つらつらと昔話をする俺の姿を見てあいつはどう思うだろうか。なぜ今さらになってそんな昔のことを蒸し返すのかと気を悪くするだろうか。ああ、けれど俺の記憶の中のあいつは、嬉しそうに笑うのだ。自分のことをまだそんなふうに言ってくれるなんて嬉しい、と、これ以上ないぐらい幸せそうに笑う。だがそれが今のあいつとは重ならない。あれはもう、俺の知る彼女ではなかった。当たり前だ。別れてからどれだけ経ったと思っている。部屋を出ていく彼女の背中を追いかけられなかったあの日から、俺の中の時間は止まっていたとしても、時間は当たり前のように平等に流れているのだ。

黄瀬にはいろんな話をした。あいつとどこへ行ったか、だとか、どんな話をしたか、だとか、どんな女だったか、だとか。取り留めなく話された内容に、相手が理解しやすいように順序だててやるなんて気遣いはまったくもってなかっただろう。だというのに黄瀬は真剣に俺の話に耳を傾けて、途中特に言葉をはさむこともなく俺に言葉を続けさせた。


「けどな、後悔してんだよ」
「追いかけなかったことを?」
「ああ。あのとき追いかけてたら、今はどうなってたんだろうなって考えねえ日はねえな」
「でもそれは未だから思うことっスよ。たぶんそのときの青峰っちには絶対にできなかった考え方っス」
「……だろうな」
「今日は素直っスね」
「今日だけな」
「ならそんなレアな青峰っちに1つ俺から忠告しておいてあげるっスわ」


ぴ、と人差し指を突き立てて黄瀬は言う。


「遅すぎることはないって、よく言うでしょ。あれウソっスよ。実際青峰っちはあのときああしていればよかったって過去を後悔してる。そんで多分それは正解なんスよ。でも今はもうできない。時間が経つにつれてできることってのはどんどん少なくなってくる。いつかを期待してたら、そのいつかはなくなっちゃうんス」


だから、動くのはいつだって今しかない。今を逃せば、もう2度とそれはできない。
そう言う黄瀬の言葉は痛いほど正論だった。そしてそれはずっと分かっていたのに目を反らし続けた真実だったのである。
だが今俺になにができるというのだろう。俺はもうあいつに会うこともできないし、連絡だってとれやしない。あれから携帯を壊した俺の携帯に、あいつの連絡先はないのだ。それに彼氏がいるのなら、俺に会うことはあいつと彼氏との関係を損なわせるだろう。

なんて、結局俺は自分が傷つかないための言い訳を探しているだけだ。でも、だって、なんざ、男らしくねえ。それに彼氏に申し訳ないと思うなら、あいつは俺には会わないだろう。それはそれでいいではないか。今のまま宙ぶらりんでいるよりはよほどマシだ。それに今のままずっと葛藤を抱えたままでいるよりは、潔くすべてを知ってしまった方がいいに決まっている。

だが、実際あいつに連絡がとれないのは事実だ。そういう場合どうすればいいのか、と、黄瀬に問うてみた。今日の俺はおかしい。いつもなら黄瀬にこんな弱みを見せたりはしないのに、相当弱っているのか。あるいはテツに負けてから、友人を頼るということを覚え始めたということなのか。
しかし俺の友人はやさしかった。そりゃこんな俺の傍に変わらずいてくれるようなやつだ、やさしいに決まっている。


「それに関しちゃ、あんたにはとっておきの強い味方がいるじゃないスか。情報を集めるのが得意なかわいいマネージャーが」


その言葉を聞いてすぐさま席を立った俺を黄瀬は追いかけなかったし、声もかけなかった。それに希望が見えていてもたってもいられなかった俺はコーヒー代を置いてくることも忘れてしまっていたが、それはそれで後から払おう。おそらく黄瀬なら「あんたが後悔しないように行動できたらそれでいいっスよ」なんて言ってくれそうだが、礼も兼ねて、あのコーヒーは奢ろう。
あれからどれだけ走っただろう。部活をしているときでもこんなに早く走れただろうか。そう思うほど体は早く駆けていく。びゅんびゅんと耳のすぐそばで鳴る風が、もっと早く走れと訴えかけているようで、さらに足を急がせれば、いつもよりずっと早くさつきの家についた。そして息も整えないままドアを開け、そのままさつきの部屋へあがりこむ。火曜日の昼、さつきの両親は働きに出ているし、さつきは部屋にいる。そのぐらい、俺は知っているのだ。

だから遠慮することもなくさつきの部屋へあがりこみ、驚くさつきを無視して床に額を擦りつけた。そんな俺にさつきはどうしていいか分からなかったようだが、数年ぶりに口にしたあいつの名前にさつきはすぐさま俺の意図するところに気が付いたらしい。さつきは俺に帰れと言った。けれど俺も引き下がるわけにはいかない。今しか動けないのだ、今しかないのだ。後悔しかない。もう1度だけあいつに会いたい。そのためならなんだってできる。もう前の俺じゃない。あいつのことが好きなんだ、もう1度だけ話がしたいんだ。そんなことを言い続けたと思う。
どれだけの時間が経っただろうか。気が付いたときにはさつきは俺に帰れと言わなくなっていた。だからそのまますこしだけ頭をあげれば、さつきは携帯を触っていて、そして俺に「負けたよ大ちゃん」と微笑んだ。

さつきは1度だけ俺にチャンスをくれたのだ。あいつに会う最初で最後のチャンス。ただ、もしこの機会に俺があいつに会いに行ってあいつがすこしでも怯えるようなことがあれば、そのときはもう2度と会わないでくれ、とさつきは言った。そりゃそうだ。さつきはあいつの友達だった。そして友達であるなら、本当なら俺のような男にあいつと会ってほしくはないだろう。だというのにさつきはそれを許してくれたのである。

いつも待ち合わせに使う喫茶店で1時に待ち合わせにしたから、と言ったきり、さつきはレポート作成に取り掛かるからはやく出て行ってくれと俺を部屋から追い出した。だがそんなことはどうでもいい。どうでもいいのだ。だから俺はドアの向こう側のさつきに聞こえるようにおおきな声で「ありがとな!」と叫んだのだが、さつきからの返事はなかった。だがおそらく、俺の気のいい幼馴染はドアの向こう側で笑ってくれているだろう。ガキだったころから俺の世話を焼いてくれたやつだ。黄瀬もそうだが、さつきもまた、俺の人生において必要不可欠な存在であると思う。
だからもう1人、俺の人生に色を与えてくれた女に、会いに行こう。

さつきがいつも待ち合わせに使うのだと言う喫茶店は駅の近くにある。それに今度はそれなりに時間があるから、走ることなくゆっくりと歩いて向かったのだが、それでも緊張しているのか妙な汗をかきながらその場に向かえば、そこにはすでにあいつがいた。思えばあいつは待ち合わせの10分前には最低でもその場についているような女だったっけか。俺なんて下手をすれば1時間ぐらい遅刻してくるというのに、あいつはいつもその場にいて、あまつさえ「わたしも今来たところだから」なんて分かりやすすぎるウソをつくのだ。
ああ、ほんとうに情けない。だが、今ここで諦めるぐらいなら、あいつのことを好きだなんて黄瀬に言ったりはしなかった。

だから俺はそのままゆっくりとあいつの責へ近づいたのだが、耳のいいあいつはこちらへ近づいてくる足音でも聞こえたのだろう。驚いたようにこちらを見て、そしておおきな目をいっぱいに見開いて俺を見た。


「……ひさしぶりだね、青峰くん」
「…よお」


最初にかける言葉は何にするか、は移動中に散々考えたはずだった。だというのに俺の口から出た挨拶はそんな短くてぶっきらぼうなもので、つくづく自分が嫌になる。けれど彼女はそんなことなど気にすることなく、すこしぎこちなくはあるものの、俺に席を勧めてくれた。だから俺もそこに座る。

この間街で見かけたのを除けば、会うのはほんとうに数年ぶりだった。だというのにあいつの纏う雰囲気は付き合っていたあのころと変わらない。それがすこしだけ救いだった。


「あの、今日はさつきちゃんと遊ぶ予定だったんだけど」
「さつきに頼んだんだよ」
「さつきちゃんに?どういうこと?」
「…俺が、おまえに会いたかったから」
「…わたしに?」


なんで?と問うなまえの声は震えていた。呆れているのだろうか、怯えているのだろうか。相変わらず女心に疎い俺には真偽はわからなかったが、俺には戸惑っているように見えた。だから俺は口を開いた。なるべく俺の思っていることがすべてあいつに伝わるように、シンプルな言葉を選ぶことを心がけながら。


「謝りてえ」
「青峰くんが謝ることなんて何もないじゃない」
「おまえを傷つけたのは俺だ。おまえみてえないい女がいたってのに他の女に現抜かして、バカなことをした自覚はある。後悔もした」
「…いいよ、べつに。やだな、青峰くん、そんなことずっと気にしてくれてたの?べつにいいんだよ、わたしは青峰くんが好きだったんだし、青峰くんの傍にいれることが幸せだったんだから」


当たり前のことだが彼女の語る言葉はすべて過去形である。それがちくちくと俺の心を指すけれど、そんなことは百も承知でここへやってきたのだ。まだ伝えたいことは山ほどある。
口を閉ざすのは彼女に拒絶されたときだけだ。そう決めてここへ来たのだから、まだ口は閉ざさない。


「好きだ」
「…え、ちょっと」
「好きだ。おまえが好きだ。ウソじゃねえ。おまえと別れてから、女とは付き合ってねえし、もちろんヤってもねえ。誰と一緒に居ても理屈じゃねえんだ、おまえじゃなきゃ、意味がねえ」
「青峰くん、ちょっと待って」
「迷惑なのは分かってる。今更何言ってんだっておまえは怒っていい。俺の顔も見たくねえって言うなら、もう2度とおまえの前には現れねえ」
「…もしわたしが迷惑だって言わなかったら、どうなるの?」
「それを俺に遠慮して言えねえってんなら、さつきに言ってくれ。そうすりゃ俺はおまえの前には現れねえし、おまえに非はまったくねえよ。だが、そうじゃねえなら、もう1度俺にチャンスをくれ」
「なんのチャンス?」
「おまえに俺を好きになってもらうための時間が、そのチャンスが欲しい」


拒否されたとしても、おかしくないと思った。だってそうだろう。こいつはあのとき、あんなにも傷ついたのだ。だというのにその傷つけられた男に数年後いきなりこんなことを言われては、どんなに優しい女とて腹を立てたとておかしくはない。もし不愉快に思ったのなら殴ってくれてもよかった。きっとそれでも、こいつを好きな気持ちは消えることはないだろうが、それでもすこしでもこいつの気が晴れるなら、もう俺は何をされたってよかったのだ。あのときこいつが俺に向けてくれた献身はこんなものではなかったはずなのだから。
だが俺が伝えたいことはすべて伝えてしまった。これ以上、なまえが俺の話を聞かなければならない道理はない。席を立ってもいいし、怒りを叫んでもいい。だが、どこかで期待する自分がいる。あのころのなまえが、俺に笑いかける。
許してあげるよ、青峰くん。
そんな声が響く。
だから俺はそんななまえに言ってやりたくなる。おまえはもう2度と俺を許さなくていい。そうやって自分の気持ちを殺す必要はない。我儘になっていいんだ、今度は俺がおまえの全部を許すから。

だというのに俺の幻想の中の彼女は俺の声など聞こえないらしい。いつも彼女は笑って、それでもどこか悲しそうに、俺を許してくれるのだ。

だが現実に彼女はここにいる。そして彼女はあのころにはなかった気丈さでもって、俺に言葉を返してくれる。だがその目はやはり不安定に揺れていて、その目に映る俺もおなじように不安そうな顔をしているものだから反吐が出る。
そして彼女は口を開いた。


「青峰くん、わたしはもう、青峰くんを前みたいには許せないよ。多分、あのころのわたしには戻れない」


それは、分かっていた返答だった。そして何度も自分の中でシュミレーションしてきた言葉だった。傷つきは、しなかったはずだ。ただ、心臓の奥がひりひりと痛む。
それでも見た目には平静を装うことができたらしい俺は、そのままちいさく頭を下げて、なるべく威圧的に見えないように目を細めてみせた。おそらく不格好だろう。こんなことなら黄瀬にキレイに笑う秘訣でも教わっておけばよかったかもしれない。だが最後に見せる姿ぐらいはせめて取り繕っておきたいだろう。そしてそのまま伝票を手に立ち上がり、「時間とらせて悪かったな、幸せにな」と言ってやるつもりだった。本当は頭を撫でたかったけれど、俺に触れられるのも嫌だろうと、手は引っ込めたまま。

だというのに彼女は伝票を持った俺の手を掴んだまま、俯いた顔をあげることなく、それでもぎゅうと強く俺の手首を握った。ただ彼女の手はちいさいから俺の手首をつかむのは難しそうで、なかなかうまく力が伝達してこなかったが、それでも俺を引き留めたいらしいことは分かった。
だがうまく理解ができない。なぜ彼女は俺を引き留めたいのか。もしかして、もしかすると。…いや、やめよう。そんな期待をするのは、だめだ。戻れなくなる。


「わ、わたしダメなの」
「…どうしたんだ?彼氏とうまくいってねえのか?」
「彼氏?彼氏なんて、いないけど…」
「あー、なんかこないだ男と歩いてんの見たんだよ」
「背の高い男の人?それ従兄弟だよ。わたしが男の人と歩くこと、ないから」
「そりゃねえだろ、だっておまえ、可愛いじゃん」
「わ、わたしが最後に彼氏がいたの、高校時代だから…」


高校時代、ということは、おそらく俺だろう。俺と別れてからというもの、男子人気の高かったこいつが彼氏をつくったという噂はちっとも耳に入ってこなかった。


「…悪かったな」
「違うの、違うの青峰くん。青峰くんのせいじゃない。それに、わたし、…嬉しいんだよ」
「…待ってくれ、意味がわからねえ」
「わ、わたしから振っておきながら、わたしまだ青峰くんのことが好きでたまらないの。でも、あのころのわたしみたいに、青峰くんが何をしても許すことはできないと思う。…こんなわたしは、青峰くん嫌い、かな」


そう言って顔をあげたなまえは大きな目いっぱいに涙をためていて、それは今にも零れ落ちそうだというのに彼女は必死になってそれを耐えていた。そんな彼女を喫茶店の中だというのに抱きしめた瞬間に、数年もの間見えていた彼女の幻が消えていく。そのとき彼女はすこしだけ寂しそうだったけれど、それでも今までのような無理をしたような笑顔ではなく満面の笑みを浮かべて「だいすきだよ、青峰くん」と言ってくれる。その言葉は今抱きしめている彼女の口からも発せられているようだ。
肩をじっとりと濡らす彼女の涙は、彼女がこの数年間抱えていたものだ。そしてきっと俺だけが癒すことのできるもので、なによりの彼女の愛の証明だ。

なあ、これからはおまえの我儘で俺を振り回してくれないか。なんだっていいんだ。行きたいところがあるならどこへだって連れて行く。言いたいことは遠慮せずに全部言ってくれ。俺はバカだからそのぐらいじゃねえと分かんねえよ。器用じゃねえんだ。それに俺がおまえに約束できることなんて、これから先何があってもおまえ以外の女を愛すことなんざねえってことだけだけどよ、それでもいいなら、俺の傍にいてくれるか。

(14.0218)
憂妃さま大変遅くなってしまい申し訳ありません…!こんな感じで大丈夫でしたかね…!!ひさしぶりに書いたのでグダグダ感が否めない気がする…。あんまりにもひどかったら後日また書き直します…!
本当に素敵リクエストありがとうございました!


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