クビになった。どうしてだ、どうしてプレゼンに出席したわけでもない、何か特別な失敗をしでかしたわけでもないオレがクビになる。そして実質プレゼンを最悪な形で失敗させた彼女がどうして、謹慎処分なのだ。納得がいかない。しかし、オレ以上に部長は納得がいかないらしい。先程から綺麗な顔を歪めて、オレを睨みつけている。


「言いてェことは分かるな?」

「わ、かり、ません」

「テメエはオレの気に入りの部下をわざと失墜させた。アイツの才能はテメエなんかとは比べものにならねェんだ、下手に扱うな」

「その、証拠は」

「あ?」

「その証拠はどこにあるんですか!」

「テメエのデスクの下のゴミ箱から、アイツが昨日使うはずだった書類の数枚を発見した。言い逃れしてェなら勝手にしろ、受理はしねェがな」

「………!」

「そういうことだ、今日中に荷物まとめて出て行け」


冷たく言い放つと、それから部長はオレのほうを一切振り返らなかった。そしてそのまま本当に、そうまさに言葉通り空気のような扱いを受けた。誰に声をかけても同じように、(まるでオレの存在が見えていないかのように)ことごとく言葉は返ってこなかったし、それどころか冷たい目で黙ってオレを睨みつける者さえあった。

皆にバレているというのか、オレの姑息な裏切りが。

どうしてなまえばかりがそう擁護されるのだ。どうしてオレがこのような扱いを受けなければならない。パソコン1つまともに扱えないアイツにこのオレがどう劣るというのだ。納得がいかない、納得がいかない。

外はザアザアと雨が降っていた。その音が、徐々にオレの頭の中の正常な部分を削り取っていくように、まったく逆の意味でオレの思考をクリアにさせた。


この際別に自分が何をしたかはどうだっていい。全て棚に挙げてやる。そうさ、もうこうなったら、自分の苛立ちを最優先事項として考えよう。どうしてこうなった、誰に1番腹が立っている。そうだ、オレはなまえに腹が立っている。オレよりも会社に必要とされるなまえに、新たな幸せに笑みを浮かべるなまえに、そう、オレはなまえが憎い。

オレはふらりと会社を出た。目的地はただ1つ。


なまえの家だ。


(10.1029)




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -